ある夏の夜、丑の刻参り

大学の時、面白半分と度胸試しでよく肝試しをやってたんだ。

小中高はたまた大学まで同じという悪友4人組。

毎週行くもんだから、並みの心霊スポットとかだともう慣れてきちゃって、
これじゃ度胸試しにならんよなあ～と思ってさ、まあ飽きてきたんだな。

悪友の一人がホラー映画とか怖い話が好きなんだけど、
「結局人間が一番怖くね？」という結論に至った。

確かに、コトリバコとか蟲毒とか両面宿儺とかさ、
人間が作り出したもんが恐怖に陥れているわけで。

あとは殺人とか詐欺とか性犯罪とか、どう考えても人間の方が怖え。

「だったら怖い人間を探す肝試しがおもろいんじゃね？」

俺たちは割と危ない度胸試しを考え付いてしまった。
思えばこの時、ぶん殴ってでも止められてたら、3人にならずに済んだのに。

”怖い人間”
みんななら何が思い浮かぶ？

ヤクザ？ヤンキー？通り魔？ストーカー？厳しい両親？

色々あるとは思うけど、上述した通り、

人々を苦しめた呪いは人が作ってる。そういった人間が一番怖いよね。

でも今現在、呪術で誰かが苦しめられてるとか聞いたことがない。

知恵を絞って出た答えは、「丑の刻参り」だった。
現存する最もポピュラーな呪いはこれだろう。

その現場をカメラに収める。それが俺らの第二次肝試しの目標だった。

俺たちは徒歩5分の神社、車で2時間の神社、鈍行列車で4時間の神社。
数にして100を超えていたと思う。
いくつもの神社を巡って、丑の刻参りの形跡を探し続けた。

ここまで半年かかってる。
19歳の好奇心旺盛な俺たちの瞳は、少年のようにさぞキラキラ輝いていたことだろう。