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ヒトコワ

やうくいさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

兄妹
長編 2021/03/11 12:42 11,402view
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Yさんという人が私の所属している部署に新しく入ってきた。
年齢は30代半ばから後半で、風呂にあまり入っていないのか体臭がきつく、誤魔化すためなのか香水の匂いがとてもきつい人だった。
他にも、職場に置いてある一人1つのお土産を一人で2,3個取って堂々と職場で食べたり、普段の表情が暗く仕事のやる気もないという人事が本当に面接をしたのか疑われるような人材だった。
当然ながら入って1ヶ月ほど経つ頃には職場でかなり浮いており、恐らく試用期間終了と共に契約は切れることになっていた。

さて、Yさんの任用から2ヶ月ほど経ったある日のこと。私が使っていたマグカップを見た彼女がいきなり話しかけてきた。
「あっ!それ〇〇ってキャラですよね!
私、大好きなんですぅ!」
「へー、そうなんですか。知り合いから貰ったんで知らなかったです。」
あまり邪険に扱って恨まれるのが怖かったため、私は適当にあしらう事にした。
幸か不幸か、Yさんには適当にあしらった事が伝わらなかったようで、その日から随分積極的に話しかけられるようになった。

彼女は実家暮らしで、引きこもりで夜だけ散歩に行く兄と、かなりボケてきている母との3人で暮らしいるそうだ。
趣味は〇〇のキャラグッズ集めと、映画鑑賞
彼氏はいないとのこと。
本当に毎日毎日、全く興味の無い相手の話を聞かされ、私は日々ストレスを感じていた。

ある時、例のキャラの絵画展が近くの美術館であるらしく、Yさんに誘われた。
当然そんなキャラに興味はなかったし、一緒に行きたい相手でも無いので丁重に断った。
すると、週末に一人で行ったらしく私だけがお土産を渡された。
これは完全に好意をもたれていると確信した私は、諦めてもらうために出来るだけ冷たく対応するようにしたが、一向に諦める気配はなく、話しかけられる頻度はむしろ増した。

ストレスが限界に達しようとしていた時、隣の席の面倒見のいい先輩に言われた。
「さっさと断りなって。彼女いますって伝えたら諦めてくれるよ。」

言い忘れていたが、私には彼女がいる。
ちなみに例のマグカップも彼女から貰ったものだった。
「でも、もし向こうの好意がこっちの勘違いだったら、失礼だし恥ずかしいじゃないですか…」
「優柔不断な奴だな。いいよ、私が確認して彼女がいる事伝えてあげる。」
「マジですか!助かります。何かお礼はさせて貰いますので…」
「うん、ハーゲンダッツのファミリーパックでいいよ。」
「交渉成立ですね。」

先輩はYさんを別室に呼びつけ、しばらくの間中で話していた。どうやら話は上手くいったらしく、しばらくすると笑顔で出てきた。
「やっぱYさん、君のことが好きだったみたいよ。趣味が合うからって。」
「彼女から貰ったカップのキャラが好きみたいですね。僕は全然知らないんですけど。」
「彼女さんいるから諦めなって言ったら、そうなんですねって言ってたし、たぶん分かってくれたと思うよ。」
「いやぁ、助かりました。ハーゲンダッツの件は任せといてください。」

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コメント(2)
  • そんな煽りで律儀に襲ってきてくれるのか…
    当初の目的を見失いすぎだろ

    2021/03/28/17:00
  • 完全にバレてて死ねって言われたら当初の目的も見失うだろうwでもどちらにしても同じ会社の人間が立て続けに被害に遭ったらその線で捜査はするだろうし、遅かれ早かれ犯人にはたどり着いたろうね。

    2021/04/02/20:48

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