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心霊

バクシマさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

寄稿文
長編 2023/05/23 16:11 8,684view
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『帝昭大学合気道部現役部員のみなさん、日頃の稽古お疲れ様です。そしてコーチ、いつも後輩部員の指導ありがとうございます。55期卒OBの宮地です。この度は第37回合気道部OB総会に寄稿の場をいただいたことに感謝いたします。
卒業後仕事を始めると時の流れが早く感じるもので、いつまにか、私も先日30歳の誕生日を迎えました。
これを機に運動不足の身体に活を入れるため、私も合気道を再開したいなと思うのですが、仕事の傍らだとなかなか稽古の時間を取れないものです。現役部員のみなさんは、稽古に没頭できる今の時間を大切にしてください。必ずみなさんの財産になります。さて・・・』
このような寄稿文が封入された封筒が届いたのは、先週のことだった。
僕は部活の主務としてこういったOBとのやりとりを一任されているのだが、宮地というOBは記憶にない。
そこで面識のある若手OBに連絡をとってみたが、宮地という人は知らないという。
そういえばあそこにと、部室の奥に仕舞われた古い名簿を確認してみたのだが、その名簿にも55期卒に宮地という名前はない。
いったい、この宮地という人物は何者なのか。
勝手な憶測で男だと思っていたが、あるいは女の可能性もある。
僕は宮地という謎の人物(以下、宮地先輩という)に、いたく興味が湧いたのだった。
なので、いっちょ会いに行くことにした。
が、あいにくにも手紙に記された住所は県外であった。
問題無い。障害と言える程ではない。
僕は手紙に記載された住所をもとに新幹線を乗り継ぎ、
やがては宮地先輩が生息する土地に辿り着いた。

探しに探して、目当ての住所を見つけたには夕刻だった。
そこには廃墟ホテルがポツンと建てられていた。
その壁面の白けたコンクリートには、ところどころが植物の蔓に覆われていた。
胸騒ぎを丹田に落とし込みながら玄関の敷居を乗り越えていく。
「宮地センパーイ!帝昭大学合気道部の者ですー!いらっしゃいますかぁー!?」
予感はしていたが、返事はない。
随所で砕け落ちた壁の破片。
どこから入ってきたのか木片。
人の住んでいる様子はない。
夕陽が暮れて、視界も暗くなってきた。
心細い。背筋が寒い。
浪漫の終わりはこんなものか。
しかし帰路に踵(きびす)を返す前にやらねばならぬことがある。
それはいわばマーキング。
だがカラースプレーで「帝昭合気道部参上」などと壁を汚すような下品な真似はしない。

僕には崇高な趣味がある
それは・・・
僕はおもむろにリュックを薄汚れた床に下ろし、道着と袴を取り出して着替え始めた。
白い道着に袖を通し、黒帯を締め、最後に袴を履いて
「さて・・やるか・・・」
・・・それは、
「廃墟・廃寺・廃神社で合気道の独り稽古をする」
というものだ。
恐怖の環境下で鍛錬することで、より技は磨かれるはずだという理念である。
そして、あえて床には何も敷かない。
それが僕のこだわりだ。
無論道着は汚れるが、それが勲章のようで愛おしい。
彼は壁際に立ち、受け身の構えを取る。
「帝昭大学〜!! 合気道部〜!! ふ〜!!」
・・・そして僕は気合を発しながら後ろ回り受け身を始めたのだった・・・

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コメント(1)
  • 何だか最後までわからない話ですね。

    2023/05/23/21:27

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