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白と黒の旅人さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

妖魔?の神社
短編 2023/05/22 15:48 3,925view

妖魔とは、その心の複雑さや傷ついた心が美しい容姿で現れるもののことなのだとか。深い憎悪などがある場合、ことさらに美しい容姿になるらしい。

今回はおそらく妖魔では?というものを見た時の話。

大学の春休み、同学年の男3人で旅行に出かけた時である。
なんかもう、男3人うち1人霊感持ちといういかにもなメンツである。
ここで、出会ったのがただの一般通過浮遊霊みたいな比較的生易しいものであれば良かったのだが、私たちが「ソレ」に出会ったのは午前11時頃の廃神社と思われる場所。

発見の経緯はひとりが「霊山らしいし、狐の窓で何か見えるかも」と狐の窓を行ったところ、偶然指どうしの間から見た時、神社の鳥居が見えたからだ。
狐の窓というのは調べてもらえば直ぐにわかると思う。
基本的に妖怪が人に化けているかどうかを見破るためにするもの。反面、妖怪側から見破られたとバレやすいため、そのまま攻撃されるリスクも伴う。

初め、狐の窓で見た時に発見したことから「弱い霊が狐の窓に気づき、呼び寄せるために神社に視線を無意識に向かせた」と予想した。
霊というものは人家の中ではテレビ等、屋外では神社や目立つ高い建物などに居ることで人の視界に入ろうとする。森の中に廃神社というのは正しく気になる人は中に入ってみたくなる場所だ。

ひとりが神社に近づく中、放っておく訳には行かず直ぐに連れ戻せるように私が着いて行った。

神社に近づくと途端に何も感じなくなった。
なんとなくわかる人にはわかるかもしれないが、森などの深いところに行くと雰囲気がかなり変わるし、神社や寺の敷地に入るとそれとなく空気が澄んだように感じる。
しかし、この廃神社に近づいてもそう言ったものはおろか、嫌な雰囲気もしない。

「もしかしたら浮浪者とかが住んでるかもしれないし、入るのはやめとこう。」
と友人を説得し、中に入る代わりに周りをぐるっと見ようという話になった。

正面から左回りに神社の敷地の外を回っていくと、元々襖か何かがあったのか中の様子が伺える場所があった。天井付近には木で掘られた装飾がある。
中は暗くてよくわからないが木造建築で時折風に揺れて動いた木の合間を縫って木漏れ日が神社に差し込んでいる。

「あれって木彫りの龍か?」

友人がスマホのカメラを使い拡大して天井付近の装飾を見ていた。画面には頭部など一部が欠損しているが確かに龍らしきものが見て取れる。

「元々龍でも祀ってたのかもな。」

と最初はさして気にもせず歩いていたのだが逆側に着こうかというところで気がついた。

反対側と同様に襖があったらしき場所には何も無いのだが、そうなると、向こう側からもこちら側からも、向こう側の景色が見えなければおかしいのである。

神社の本殿の真ん中に壁を作る意味はさしてない。だろうに、何故か向こう側が見えない。

じーっと見ていると暗かった部分が少し明るく見えた。
僅かに差し込む向こう側の光によって見えたのは黒くて鱗のようなものが着いた正しく蛇か龍といったもの。黒水晶とかと言うより、プラスチックの黒いボタンみたいな光の反射をしていた。

こんな廃神社に未だに神様が残っているのかと思い、ずっと見ていると「おーい、O!なんか気になるものでもあったかー?」と先に行っていたらしい友人がもう1人、待たせていた友人を連れて戻ってきた。

「いや、天井付近の装飾見てた。」

そう言って3人でそのまま神社を後にした。

その後、この鱗に覆われた何かを見たことは無い。
ただ、1つ言えるのは、神様というものはあれほど蔑ろにされて穏やかに居れる存在ではないということ。調べればどういういわれがある神社なのかわかっただろうけど、少なくとも、神なき後の廃神社に居座って、神様の真似事をしている存在が人間に利のあることをしてくれるとは思わない。

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