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心霊

kanaさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

悲しい灯(ともしび)
短編 2023/05/13 19:18 3,641view
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昼頃から降り始めた小雨が、夕方にはやや強い雨に変わっていた。
遠くで雷鳴が轟いている。

「母さん、ちょっと早いけど、ボク心配だからこれから陽菜(ひな)を迎えに行くよ」

「あなた、行ってらっしゃい。濡れてるかもしれないから、タオル持って行ってください」

「あぁ、ありがとう。じゃ行ってくるよ」

K氏の家からクルマが出る。塾で遅くなる娘さんを、いつもこうして迎えに行くのだ。

・・・・・・

塾の周りには傘を差して待っている親御さんたちの姿が見える。
最近はK氏のようにクルマで迎えに来る人も増えた。
そのためか、誘導灯を持った警備員が交通整理を行っている。

3年前から塾側の配慮で実施されている。

やがて塾の扉が開き、子供たちがわらわらと出てきた。
すぐにクルマに向かう子も入れば、傘を持つ母親のところへ駆け寄る子もいる。
もちろん友達同士や、一人で帰る子たちもいる。
他人の子ながら、K氏は心の中で(気を付けて帰るんだよ)と声をかける。

一番最後になってようやく娘が出てきた。
K氏は助手席の窓を開け、声をかける。

「陽菜、こっちだよ。遅かったね」

中学校指定の紺色のPコートが、少しだけ雨をはじいて陽菜を守っている。
助手席に乗り込み、シートベルトをする娘。少し濡れて湿気を吸った陽菜の髪は、

いつもよりクシャクシャのナチュラルボブになっていた。

暗闇で、看板や信号機、それに建物の窓から射す光だけがこうこうと輝いて、
それがウインドウに落ちた雨のフィルター越しに幻想的な光を放っている。

陽菜は少し寂しそうな表情をしているものの、大きな瞳はどこか遠くを見ているようだ。
髪の先から、一滴だけ雨のしずくが頬に落ちる。
そのせいでまるで一瞬、陽菜が泣いているように見えた。

妻から渡されたタオルで陽菜の髪を拭いてあげる。

「今夜は陽菜の好きなハンバーグだって。母さんお手製のコーンスープもあるよ」

「・・・ありがと・・・」

「・・・陽菜、またあの事考えてるのかい?」

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コメント(4)
  • 切なく泣かせる…

    2023/05/13/19:34
  • ↑kamaです。さっそくお読みいただき感謝です。
    一部ですが、より良い表現に書き換えました。よろしくお願いします。

    2023/05/13/21:01
  • 切なくて言葉が出てこないです。

    2023/05/14/02:18
  • 怖い話ではなくて切ない話ですね。事故で家族を失った家は本当にそうなります。

    2023/06/08/14:25

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