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意味怖(意味がわかると怖い話)

昆布の出汁
短編 2021/03/07 00:49 1,902view
小さなうどん店を営んでいた父が行方不明になり、私が後を継いでおよそ2年になる。
もともと跡を継ぐつもりで他のうどん店で修業をしていたとはいえ、急な出来事だった。
店は「頑固親父の味」を謳い文句にしていて、その味を引き継ぐのは大変だった。

ある日、出汁に使う昆布や鰹節を仕入れるのに市場へ行った。
父もお世話になっていたいつもの乾物屋へ行くと、ラベルの無い昆布が目に入った。
これは何だと尋ねると、このところ昆布が獲れなくて、いつもの漁場ではないところで獲れたものだという。
その場所は今まで昆布なんか獲れなかったが、いつもの漁場から近い所の物だから品質には問題ないそうだ。

昆布はその場所に自生し始めてから2年ほどで食用として収穫される。
この昆布は新しい漁場で獲れた新しい物だから、味の評価が定まっていないという。
だだ、収穫してその日に天日干しされてすぐに製品になっているから、新鮮なものであることは間違いない。
最近昆布が高騰しつつある中で、これが比較的低価格なのは魅力的だった。

私は試しにその昆布を全部仕入れる事にした。
全部といっても今日使う分しかなかった。

店に帰ってその昆布で出汁を取ってみると、むしろ今までよりも美味しい出汁が取れた。
常連さんにも好評で、明日もまたその昆布を仕入れる事にした。
翌日また乾物屋に行くと、昨日買った昆布は少ししか獲れなかったから、その昆布はもう入荷しないという。

乾物屋の主人と昆布の話をしていたはずが、いつしかただの世間話になった。
その中で、ある昆布の漁師が海で水死体を発見したという話があった。
水死体はすでに白骨化していて、警察に連絡したものの、その時点ではそれが誰なのか分からなかったという。
しかも、昆布がその遺体に絡みついていたという、本当か嘘か分からないような話だった。
それが本当なら、昆布は人間から栄養を吸収して成長していたのかもしれない、という話だった。
海産物というのは少なからず海の生物を栄養素にしているから、それはあながち間違っていない。
しかし、人間を栄養源としていると考えるとゾッとするし、そんな昆布は正直使いたくない。

店に帰ると、常連さんが昨日の方がうまかったと言うので、それは昨日しか手に入らなかった特別な昆布を使ったからですよ、と答えるしかなかった。
今日は今まで通りの昆布を使ったから今までの味で間違いないのだが、確かに昨日の出汁方がうまかった。

その日の夜に警察から連絡があり、父が見つかったという。
海底で白骨化していて、昆布が絡みついていたから発見が遅くなったそうだ。

父は趣味の釣りに行って、高波だか高潮だかに襲われてかなり遠くまで流され、海底の岩場か何かに引っかかって浮いてこなかったらしい。
それでそのまま発見されず、海底で白骨化したというのが警察の見立てだった。

そういえば乾物屋の主人は、昆布の漁師から、この前の昆布が獲れた漁場や水死体が発見された場所をはっきり教えてもらえなかったという。
漁師の漁場は縄張りみたいなものがあるらしく、その詳しい場所は教えてはもらえないのだろう。
しかし、教えられない理由が他にもあるようなのだ。乾物屋の主人の口ぶりからそれだけは私にもわかった。私は、それが何かを想像したくない。
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関連タグ: #海
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コメント(4)
  • 昨日の投稿で重大な指摘を受けましたので、やり直してみました。
    作者より

    2021/03/07/00:52
  • ご投稿ありがとうございます。
    前作は非公開にさせて頂きましたので、ご了承ください。

    管理人

    2021/03/07/02:09
  • 管理人さんありがとうございます。
    ご迷惑かけますが、これからもよろしくお願いいたします。
    作者より

    2021/03/07/02:37
  • 本当にありそうな話で怖いなぁ…。

    2021/03/07/10:37