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不思議体験

kanaさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

より子ちゃん (加筆修正版)
長編 2023/03/04 22:58 4,356view

小学校に入学したばかりの息子の誕生日を祝いながら、
ボクはあることを思い出していた。

小さい頃、ボクは体が弱く、病院の先生からは「ハタチまで生きられないかもしれない」と言われていたらしい。

・・・らしいというのは、ボクがハタチの誕生日を迎えた時に、母親から涙ながらにそのことを聞かされて初めて知ったからだ。確かにボクは小さいころ病弱だったけれど、まさかそこまでひどい病状だったなんて、それまで一度もそんなことを言われたことがなく、今にして思えば両親はボクの病気の事を隠して、懸命に支えてくれていたんだな、と思う。

その事にはもちろん感謝している。こうして自分自身が親になってみると、やっぱり子供の幸せな未来を夢見るのが親というものなんだなと、改めて実感がわいてくる。

ただ、ボクも実は両親には隠していたことがあった。
それは「より子ちゃん」の存在だ。

あれは11月も終わろうとする頃だ。
小さなボクを連れてS大学病院を訪れた母は、その帰りに教会の前で足を止めた。
別にクリスチャンではないのだが、教会はもうすぐやってくるクリスマスの準備で

キレイにイルミネーションで飾られ、しかもこの日はバザーが開かれていたのだ。
信者の人たちが持ち寄ったのか、教会はまるでフリーマーケットの様相。
教会とつながるキリスト教系の女子高からも応援がきており、
屋台も出ていて学園祭のような賑わいでもある。

「ねぇ、ちょっと見ていこうか」

と母は目を輝かせてボクを誘ってきた。
うれしそうな母の顔を見てボクも喜んで教会に足を踏み入れた。

しばらくして、やはりというか、体力のないボクにバザーを見て回る力はなく、
ボクはすぐさま座れるところを探して一休みすることにした。
そこは教会である。信者の人たちが座る場所がいくらでも用意されていた。

ボクは母に「ここにいるから見て来ていいよ」と言ってあげた。
いつものことである。もう慣れっこだ。

しばらくひとりで椅子に腰かけ、ぼんやりとステンドグラスやキリストの像を眺めていた。
キレイなものである。
と、ステンドグラスから射す木漏れ日のような光の中に、
ひとりの少女がたたずんでいるのが見えた。
薄暗がりの中からゆっくり現れた彼女は、自分と同い年くらいに見えた。
病弱だったボクと同じように白く、まるで透き通っているかのように、
そしてうっすらと光っているようにも見えた。
彼女はボクのそばまで静かにゆっくりと近づいくる。

1/5
コメント(1)
  • kamaです。こちらの作品は、去年のクリスマス時期に一度「クリスマス特装版」としてクリスマス色を強く出してお送りしましたが、本来のこの作品は「息子の誕生日」をきっかけに話が進むものですので、改めてこちらの作品をディレクターズカット(一度言ってみたかった)にして再掲載させていただきました。この物語の正式バージョンとなります。

    2023/03/04/23:03

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