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心霊

takeさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

深夜の怪異
短編 2023/03/05 00:06 780view
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仕事で付き合いのあるTさんから聞いた話です。
彼はデザイン事務所に勤めており、広報誌などを制作しています。

スケジュールがきっちり決まっている案件ばかりなので、
よほどのことがない限り、徹夜作業などすることはありません。
しかし、飛び込み案件が重なってしまい、徹夜することになりました。

Tさんと彼の先輩のふたりで黙々と作業していると、少し離れたところから、数人の若い女性の、はしゃぐような笑い声が聞こえたのです。
金曜の夜だったので、事務所の入っている雑居ビルの前を、酔ったOLか女子大生でも通ったんだろうと思っていました。

しばらくすると、さっきより近くでまた同じような声が聞こえました。
Tさんと先輩は顔を見合わせました。昼間なら同じフロアに他の会社も入っているので、そこの子達かとも思いますが、いまは深夜で、誰もいるわけがありません。

「子供の声でしたよね?」
Tさんが言うと、先輩も、うん、と頷きました。
最初聞いた時は女性の声かと思っていたのですが、あれは子供の声です。

先輩が何か言いかけた時、今度はビルの中で数人の子供達がはしゃぐ声とパタパタと走る足音が聞こえ、それはだんだんと近づいてきて、事務所の前の廊下、そして事務所内に入ってきたのだそうです。

足音と笑い声だけが、ふたりの周りや、事務所の机の間を走り回ります。

Tさん達が息を詰めて身動きしないでいると、だんだんと遠ざかり、三階にある事務所の窓から出ていったのです。

しばらく沈黙の後、
「なあ、いまやってる作業、持ち帰れるか?」
と先輩が言いました。

「はい、あとは校正だけですので」
Tさんは頷きました。

仕事を持ち帰るのは禁じられていますが、もうここで続きをする気になれません。

ふたりは無言のまま帰り支度し、逃げるようにビルから出て、タクシーで帰宅したそうです。

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