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心霊

Nさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

見ててね
長編 2023/02/04 21:45 6,266view
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それが始まりだったのかもしれない。
幽霊は大体日に一度かそれ以上の頻度で俺の前に出現するようになった。
授業中は退屈なのか、俺の前の席に座る生徒と同化するように重なって、後頭部から顔を生やしたり引っ込めたりして俺を揶揄ってた。
たまに黒板に立ってチョークを落として教授を困らせたりもしてたが、俺は頑としてスルーする事を決め込んだ。

すると幽霊のラップ現象?らしき悪戯はだんだんと激化していく。

ある日、俺は友達と買い物に出かけてたんだけど、ショッピングモールのカートがコロコロと一人でに動いてた。
『見てて』
そして例の声が俺の耳元に囁かれると、カートはエスカレーターに直進しガタンと傾き、下に居た利用客目掛けて『ガタガタガタガシャン』と転がり落ちてぶつかった。
一瞬の出来事だったが、辺りは騒然となった。
カートが転がり落ちてきて接触した人はかなり痛そうだったが、命に別状は無さそうだ。

それよりも、俺は幽霊が何処にいったのか気になって周囲を見回してたんだが、幽霊は俺の足元から顔だけ生やしてニッコリと笑ってた。

ああ、こいつは悪霊だ。
そう思っても俺には何も打開策なんてないんだが、これ以上関わると俺も酷い目に遭うと思って、野次馬に没頭していた友達の肩を引いて「別のとこ行こうぜ」と強引にショッピングモールを離れた。

それからも何度か幽霊は俺の見える場所で同じような悪戯を繰り返す。
その度に耳元で『見てて』と囁くんだが、この子供の幽霊はどうして俺に執着するのだろうと不思議でならなかった。
ただ肝試しにいっただけなのに、なぜ一番消極的だっ俺だけを選ぶのかと。
怖いを通り越して苛立ちを覚えたが、幽霊相手に物理的に喧嘩できる訳もないし、口喧嘩だってした瞬間に呪い殺されそうなので出来なかったが。

そんなある日、俺にも彼女ができた。
気分はまさに有頂天。
しかし、俺の幸せは瞬く間に地獄へ落とされる事になる。

奴が現れたのだ。

あれはデートの最中、道端から飼い猫なのか人懐っこい猫が現れてひとしきりモフモフしてたんだが、急に猫が逃げてったから彼女が「どこいくのー」とか言いながら緩い駆け足でしばらく猫の後を追ってたの。
俺はそんな彼女の後姿を微笑ましく眺めてたんだけど、不意に『見てて』と悪魔の囁きが聞こえた。

咄嗟に辺りを見回すが幽霊の姿はなかった。
でも、俺が周囲を警戒してたのが不味かった。
けたたましい『キーーーーー』っていうブレーキ音が聞こえて、前を見ると、さっきまでいた筈の彼女の姿がなく、代わりに車が壁にめり込んでた。

周囲の人間が何か叫んでたけど、俺はすぐには理解できなくてあたふたしてた。
でも思考は彼女が何処に行ったのかってずっと考えてて、壁にめり込んだ車、車に詳しくないけどプリウスみたいな車体の下に彼女の下半身がはみ出てるのが見えて「ああ、ああああ!」とか喚きながら駈け寄った。
その後は、あんまりよく覚えてないけど周囲の人と協力してどうにかして彼女を救出したと思う。
そしたら案外彼女は「いてて」って口を開くし、見た目ほど酷い事にはなってなくて「良かった生きてた」と安堵した。

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コメント(3)
  • なかなか怖かった

    2023/02/04/22:03
  • 何で早くお祓いしなかったのかな?

    2023/02/05/23:29
  • ↑確かに。

    2023/02/10/01:08

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