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心霊

ねこじろうさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

引っ張る
短編 2023/01/27 10:30 1,620view
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私は二十歳の男子大学生です。
同級生で高木君という男がいます。

彼は深夜のファミレスでバイトしているのですが、その店が結構暇らしくて特に深夜になると客がいなくてガランとしているということでした。

それである日の深夜、眠れなかった私は気分転換にぶらりとそのファミレスに行ってみたんです。

その店は私の住んでいる大学近くのアパートから歩いて5分ほどのところの、あまり人気のない県道沿いにポツンとありました。

深夜零時ちょっと前くらいだったんですけど、駐車場には数台しか車が停まってなくて店に入ったら案の定店内はガランとしておりました。

すぐに制服を着た高木君が笑顔で対応してくれて、真ん中辺りにある通路沿いの四人席に案内してくれたんです。

ドリンクサービスをオーダーした後、ドリンクサーバーでコーヒーを入れて席に戻ると、最近買った読みかけの文庫本を読んでいました。

しばらく没頭して読んでると、突然誰かがジャケットの裾をぐいと引っ張るんです。

え?と驚いて見ると、傍らに五歳くらいの男の子が立っています。

青いフリースにジーパン姿をしていて、私の服の裾を掴んだまま今にも泣き出しそうな顔をして「お兄ちゃん」て言うものだから「どうしたの?」って尋ねたのですが、ただじっと悲しげな顔をしながら上目遣いで見ているだけです。

すると、

「ほら、そのお兄さん、困ってるじゃないの。
いい加減にこっちにきなさい」

女の人の声がします。

ふと見ると、私の座る二つ後ろのテーブルに夫婦らしい中年の男女が並び座っていました。

男の人は背広姿で女の人はベージュ色のブラウスを着てて、女の人の方が苦笑いしながら、

「早く来なさい。お兄さんに迷惑でしょ」と言ってます。 

男の子はいかにも名残惜しげに私の顔を見ていたのですが、最後は諦めたように夫婦の方に走っていきました。

その後夫婦は私の方を見ながら申し訳なさそうに頭を下げるものですから、私も軽く会釈だけしました。

それから小一時間ほどで私は席を立ち、会計の時に少し高木君と会話した後、店を後にしたんです。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

翌日、午前の講義のあった私は朝イチから出席し、昼は学食で昼御飯を食べていました。

その日はそんなに混んでなくて比較的楽に席が見つかったものですから真ん中辺りの席に座り、ゆっくりとランチを楽しんでいたんです。

そして食べ終えて、さあ行こうかな?と立ち上がろうとした時、いきなり誰かがTシャツの裾をぐいと引っ張るんです。

え?と驚いて振り返ると、昨晩見た男の子が立っています。
男の子は相変わらず悲しげな顔で「お兄ちゃん」と一言呟くと、すぐ後方に向かって走りだし、その先のテーブルに座りました。

男の子の風体は昨日と同じだったんですけど、ただ顔や手足は何故か真っ黒くてぼやけてました。

そのテーブルには夫婦らしき男女が座っていて、私の方をじっと見て微笑んでいました。

その2人も昨晩ファミレスで見掛けた人たちだったと思います。

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