狸の恩返し

子どもの頃に父と一緒に畑へ行ったときのお話です。

うちの畑は山のすぐ側にあり、せっかく育てた野菜をうさぎやイノシシなどの野生動物に食べられてしまうことも珍しくありませんでした。

そのため収穫の時期になると作物の近くにネットを張り、動物に食べられないように対策をしていました。

ある時父と一緒にとうもろこしを採りに畑へ行くと「ギャンギャン！」と犬のような鳴き声が聞こえてきて、まだ小さな狸がネットに絡まってもがいているのを見つけました。近くには大きな狸がおり、私たちを激しく威嚇しながら近くをウロウロしていました。

絡まっている子狸も必死で吠えるのですが、声も枯れて動きも鈍くなってきているのを見かねた父が網をほどいて逃がしてやりました。

私は子狸が元気になるように、と虫食いで食べられないとうもろこしを山の方へ置いてやりました。

次の日玄関の掃除をしようと外に出た祖母の悲鳴に駆けつけると、玄関の正面に大きな金色のネズミが横たわっていました。
キンクマハムスターに似ていましたが、それよりもつやつやして鮮やかな金色で、ネズミの長いしっぽもちゃんとついていました。

埋めてやろうとしたとき(とうもろこしと同じ色だ)と気付き父に伝えると、驚いたあとに「律儀なやつら」と笑っていました。

もちろん偶然かと思いますが、父と私は狸からのお礼だったと信じています。