会社にかかってくる無言電話

私は職場でつらい思いをして、半年くらい自宅で心の療養をしていました。

働いていた職場がちょっと良くないところで、上司からパワハラ被害を受けていたのです。

最初はこれでも我慢していたのですが、その内パワハラがだんだんとエスカレートして、いくつか犯罪まがいのこともされたのです。

我慢強い私もさすがにあれにはプツンと気持ちが切れるものがあり、徐々に精神を病んでいきました。

この職場のせいで、私は仕事を辞めてからもしばらくは転職活動ができなかったのです。

両親も私の弱り果てた様子に心配になったのか、強く仕事をするようには言われませんでした。

それどころか休めと言ってくれ、私はそれに甘えたのです。

両親の優しさに甘えて半年ぐらいは仕事も探さずに自宅で休養させてもらいました。

だけど半年も経てばやることもなくなってきます。

さすがにそろそろ新しい仕事を始めないとまずいなと自分でも思って、自分からハローワークに通うようになりました。

こうして見つけたのがその職場でした。

以前のような大企業というわけではなかったけど、アットホームな雰囲気の小さな会社で、今の自分にはここがあっているなと思えるような職場に見えました。

こうして半年ぶりくらいに働き始めた新しい会社で、私はバリバリと仕事をこなしました。

仕事量はなかなか楽とは言い難かったですが、前の職場と比べたらすごく人間関係がよくて驚きました。

最初は仕事も失敗がちまちまありましたが、数か月もすれば仕事も頭に入り、職場にも馴染んできました。

そんな職場に馴染んできたときに職場に変な電話がかかってくるようになりました。

新入社員でしたし、気構えとしてなるべく下っ端が電話を取るようにしていたので、私は会社の電話に出ることが多かったです。

だから自然とあの電話に出る頻度も多いんだと思っていました。

その電話はいつも無言電話から始まるのです。

私が「どちら様ですか？」と聞くと、大抵はしばらく無言が続きます。

悪戯だろうと思ってこちらから電話を切ろうとすると毎回そのタイミングで、「助けてぇ」て女の人の声がするのです。

本当にそれは耳に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな掠れた声で、その直後にツーツーっと電話が切れてしまいました。

その電話に出るのは毎回私でした。

意識的に自分がより多く電話を取るように気を付けてはいましたが、他の職員だって電話を取ることはあります。

それなのに、なぜか他の人が電話に出るときにはその人からの電話はかかってこないのです。

いつもその気持ちの悪い電話を取るのは私で、それもまた気持ち悪かったです。

その人がなぜ助けを求めているのかも分からないし、それが本気なのか悪戯なのかも分からないのです。

こんな小さな会社に何か助けを呼ぶ電話をされても困るし、何なのだろうとずっと思っていました。

これを会社の人たちに報告して相談してみたら、途中で電話を変わってあげると言ってくれたことがありました。

そんな話をした直後に、あの無言電話がかかってきたのです。