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不思議体験

takeさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

仁王様が見ている
長編 2023/01/25 21:45 5,468view
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父は頷いて酒をひと口啜ります。
「なに、アマゾン山って」
尋ねる私に伯父は話し始めました。

その頃(昭和40年代)、家の近くはまだまだ開発は進んでおらず、自然がたくさん残されていて、
少し足を伸ばせば、標高100〜300mの小さな山がいくつかありました。
その中でも、一番標高が高く樹木が生い茂っている山がありました。
開発が進んで今は無くなってしまって正式な名称はわかりませんが、伯父たちは『アマゾン山』と呼んでいたそうです。

伯父が10歳、父が8歳のとき、近所の友達5〜6人と連れ立って、探検に行こうと計画しました。
ただ、夕方から天気が崩れて大雨になる予報が出ていたので、それまでに帰ってくるようにと親に言われており、

「わかってるよ」と聞き流して、アマゾン山に向けて自転車で出発しました。

現地に着くと、ふもとにある広場に自転車を停めて山に入りました。

玩具の銃や短剣を携え、メインのルートから外れて、わざわざ草藪や道ならぬ道を分け入って進み、
気分は前人未踏のジャングルを探検する冒険家の気分だったそうです。
木に登ったり、大きな水溜まりを湖に見立てて恐竜がいると騒いだり、
ちょっとした段差を崖だと言ってロッククライミングのように登ったり、と
夢中になって遊んで、時計を見ると時間がずいぶん経っていました。

時刻はさほど遅いわけではなかったのですが、雨雲が近づいていたためでしょう、
厚い雲に太陽は隠されて、辺りはかなり薄暗くなっていました。

親に早く帰るようにと言われていることもあり、そろそろ帰らなきゃと思いながらも、
もう少し、あとちょっとだけ、と遊び続けていました。

すると、急に周囲の空気が変わったような気がしました。
それまで聞こえていた鳥の声や、風で揺れる木々や草の音も止んで、しんと静まり返ったそうです。
「なんか変じゃない?」

全員が異様な雰囲気に気づいて顔を見合わせた、まさにその時。
『お前たちは、いますぐ帰らねばならない!』
という野太く、割れ鐘を撞くような大声が聞こえたのです。
それは空から降ってきたようにも、地中から湧き出してきたようにも思えました。
エコーがかかったように、うわああん、と空気を震わせて、やがて静かになりました。
「なんだよ、いまの?」

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コメント(2)
  • とても有難い御方に護られていらっしゃるのですね

    2023/01/25/22:43
  • とても優しいお方でよかったですね^ ^

    2023/02/01/14:53

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