保存した覚えのない画像

学生時代の体験談です。

ある日私がスマホの画像フォルダを何となくスクロールしていると、保存した覚えのない画像を何枚か見つけたのです。
4枚ほどのそれらの画像はどれも不明瞭、というよりほぼ真っ暗でした。
ただどの画像も、暗い中に少し青みがかった感じがあり、何となく、深い水底で撮られた写真のように見えました。

そして4枚ある中で1枚だけ、画面の端の方に何か薄茶色のぼやけたものが写っているものがありました。
何故そんな画像私のスマホにが保存されているのか分かりません。撮った覚えも保存した覚えもありませんでした。

しかしその時は、「まあ、鞄の中でたまたまシャッターを押しちゃったとかだろう」と、あまり深く考えませんでした。

それからすぐ、当時住んでいた家から近くの海岸で水死体が上がったと騒ぎになりました。

夜中に釣りに出ていた老人が、波に足をすくわれたのだそうです。
それからしばらくの間、その海は立入禁止になり、付近の住民は海難事故に注意するように呼びかけられていたのを覚えています。
そして聞いた話では、その老人が釣りに出かけた日というのは、私のスマホにあの画像が保存されていたのと同じ日でした。

私はあの、暗い水底を写したような写真を思い出しました。もしかしたらあれは、今にも溺死しようとしていた老人のSOSだったのかもしれないというのは、単なる考えすぎでしょうか。

そしてあの写真の中の1枚だけに写っていた、端の方の薄茶色の何かが、ちょうど年老いた男性の肌のような色ではないかと思うのは、悪い想像のしすぎなのでしょうか。