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意味怖(意味がわかると怖い話)

すだれさんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

誰そ彼のたずね人
長編 2023/01/15 17:55 5,102view
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ちょっとした買い出しを済ませ、友人の住むアパートに帰った時だった。

「たずね人について、お知らせします」

部屋の中に備え付けてあるスピーカーから、自治体の職員が放送しているのだろう、機械を通した声が聞こえてきた。
スピーカーはたずね人の性別や年齢、特徴を並べ、「見つけた際は自治体に通報を」と呼びかける。
繰り返しお知らせします、と聞こえてきたところで、おもむろに友人が「見つかるといいな」と言った。
ガシャン、と床に置かれた買い物袋が鳴る。飲むぞ、と意気込んでお気に入りの酒やつまみを買い物かごに放り込んだ友人により、帰ってきた買い物袋の中は大量の酒と肴がパンパンに詰まっている。

「ここは結構都心というか、街が近くて賑わっているから、こういうたずね人の放送はあまり無いと思っていたよ」
「何だそれ、偏見じゃん。お前ん家田舎の方だっけ?」
「そうだな。地元ではよく聞いたよ。お爺さんやお婆さんが着の身着のまま…時には裸足で町を徘徊してることもあったし」
「ヤバいなそれ」

友人はカラカラと笑う。

「それで都心ではたずね人の放送は少ないって思ってたんだ?都会の街中を裸足で徘徊するジジババは確かにそうそういないもんな」
「老人のたずね人の放送は多かったが、見つかったと報告する放送も早かったよ。何せ田舎だから、徘徊してる老人は目立つんだ」
「俺聞いたことあるんだけど、その見つかった報告って何種類か言い方があるって」
「ああ、まあ」

早速袋から取り出した缶ビールを開けようとする友人の手を、「風呂に入ってからにしろ」と嗜めながら続ける。

「見つかった時のたずね人の状態だろ。命に別状がなければ『たずね人は無事保護されました』って。逆にその…『たずね人は発見されました』って言う時は…まあ…」
「そういう状態で見つかった時ってことか」
「そうだな。…ちなみに、さっき君は『見つかるといいな』と言っていたが…」
「ああ、」

缶を取り上げられた友人は「冷蔵庫に仕舞っておいてくれ」と買い物袋を此方へ押しつけ、重みでよろける様を少しだけ笑って脱衣所へ向かう。

「たずね人の放送あっても、見つかった報告って本当に稀にしか流れてこないのよ、この地区」

「それは、見つかってないってことか?」
「3日もすれば、当事者たち以外は『誰探してたっけ?』ってなってるんじゃない?」
「都心のたずね人とはそんなものなのか?」
「さぁね。ただこんな街でも、田舎みたいに徘徊老人が多いわけじゃないだけで、」

「たずね人っていうのは、『行方をくらませて徘徊し続けてる人』っていうのは一定数存在するんだよ」

友人は早く酒を開けたい気持ちもあったのだろう、急くように風呂場に消えていった。
頼まれた買い物袋の中身を片付けた後は部屋で1人くつろいでいた。
先に酒とつまみを開けてもよかっただろうが、アレらはこの後夜通し聞く予定の友人の心霊体験談のお供にすると決めている。
どんな話を聞くだろう、と思考を巡らせていると、先ほどのたずね人に関する話が頭を過った。
裸足の老人が平然と歩き回る町が言えた義理ではないが、日常茶飯事にたずね人が見つからないまま忘れ去られる街も中々に治安がよろしくないように思える。
なぜ姿をくらますのか。
何によって姿をくらますのか。
消えた者たちは今どこで何をしているのか。

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コメント(2)
  • これの解説をお願いします

    2023/06/24/11:00
  • これマジでわからないんだけどどう言うこと?

    2024/01/12/22:43

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