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ヒトコワ

リュウゼツランさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

庭のゴミ回収
短編 2023/01/20 15:37 1,593view

アパートの一階に住んでいた時、小さな庭がありました。うちの親はガーデニングが好きで、折角だから食べれるものを植えようとジャガイモやらニンジンやら、野菜を育てていました。

ある日自治会長が来て、野良猫が来るから食べ物を育ててはいけないと言われて、憤慨した母は「もう知らん。庭なんてどうでもいい」と、一切の世話を放棄し、中途半端に育った野菜はそのまま放置され、気づけば雑草が生い茂っていました。

一か月程して、流石にそのままにしておくのは忍びないので、掘り起こして処分するかと庭に出ると、ペットボトルのゴミが二つ落ちていました。
以前庭いじりの際に母が飲んだものかと、特に気にすることもなく、すっかり栄養不足になった野菜を入れた袋に入れ回収しゴミ箱へ。

数日後、ふと庭を見やると、総菜パンの袋と空のカップ麺が。流石にこれは母ではないこと位分かりました。
母に伝えると「上の階に住んでる人じゃない? 母親と高校生くらいの女の子二人だったから」とのこと。
確かにあり得るなとは思ったけれど、そこまで目くじら立てて怒ることでもないかと処理しましたが、後日、ペットボトルやらおにぎりの袋やら、今までにない程沢山のゴミが落ちており、僕も母もこれには苛立ちを覚えました。

その翌日、またも庭にゴミが。すぐに二階へ行きインターフォンを押すと、面倒そうに女子高生が出てきました。
「下の者なんですけど、庭にゴミ落とすの止めてもらっていいですか?」というと、「……はぁ」と、否定も肯定もなく、ただ腑に落ちないという表情で応えドアを閉められました。

とりあえずこれでなくなるだろうと思ったその日の夜、今度はうちのインターフォンが。先ほどの女子高生の母親でした。

「うちはゴミなんか捨ててません!」と怒鳴りこんできたのです。確かに証拠もないし、一方的に疑うのも悪いなと反省しましたが、その後もゴミは捨てられ続けます。
でもあれだけ啖呵を切っておいて、また捨てるなんて……、いや、あれで止めたら自分が捨ててたって白状するようなものだしな……。

そもそも、外から家の中が見えない様に、庭は高い木で囲まれているので、外から投げ入れることは考え難いし、毎日通りすがりで他人の庭にゴミを捨てるなんてもっと考えられない。そんなことをあれこれ思考していたけれど、埒が明かないので、もうこうなったら自分で犯人を突き止めようと行動を起こします。

現行犯で見つける為に、一日中窓から庭を見張っていることにしました。一時間起きに庭に出て様子をチェックして――と。
しかし、結局この日ゴミは捨てられませんでした。

そして、また翌日からゴミが捨てられます。
三ヵ月程それが続いた後、二階の母子が引っ越していきました。

否定はしていましたが、多分あの部屋だろうなと思っていたので、これで平和に過ごせると思った翌日の朝、またゴミが捨てられていました。
もう母も僕も諦めました。

あれから数か月が経った今も庭のゴミ回収は続いています。

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コメント(1)
  • 監視カメラで犯人を捕まえて下さい。

    2023/01/21/16:37

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