奇々怪々 お知らせ
           
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呪い・祟り

返せ
中編 2021/02/28 20:53 2,713view
今から8年ほど前に、僕が勤めていた工場にパートタイムで来ていた、五十嵐さんと言う60代の女性から聞いたお話です。

五十嵐さんが20代後半の頃に付き合っていた、ユキマサさんと言う彼氏に起こった出来事です。

五十嵐さんは当時、過去の恋愛で心に傷を負っていて、そんな時にユキマサさんと出会い、とても明るくて、誰にでも優しく、決して大声で怒ったりするタイプでは無く、若さ故の運命と言うものを感じたらしく、交際して1年ほどが過ぎた頃、突然ユキマサさんの様子がおかしくなったそうです。

当時、五十嵐さんは実家暮らしで、一人暮らしのユキマサさんの家に頻繁に通っていました。
ある日いつものように、ユキマサさんの家に遊びに行くと、ユキマサさんが、やたらと物音に敏感になっていて、部屋の壁に耳を澄まし、隣の部屋の様子を確認したり、急に立ち上がり玄関の前で立ちすくんだりするのを、繰り返すようになっていました。

ユキマサさんの部屋は角部屋にも関わらず、隣の部屋が無い壁にも耳を澄まして、何かを確認してるのです。

五十嵐さんが大丈夫?どうしたの?と聞くと、
「来てる、来てる、絶対に来てる···」
と壊れた玩具のように、言うばかりで、とても会話にはならないと思った五十嵐さんは、しばらく会わないでおこうと、きっと疲れていて、落ち着いたらまた元のユキマサさんに戻るだろうと思い、その日は帰りました。

二週間ほど過ぎた頃にユキマサさんの家に行き、いつものように合鍵で鍵を開けて部屋にあがると、ユキマサさんの姿はありませんでしたが、元気になりどこかに出掛けてるんだろうなと思い、また改めて会いに来ようと思って、玄関で靴を履いていると、物凄い勢いで玄関のドアを開けて、ユキマサさんが飛び込んできました。
五十嵐さんの存在を無視するように、ユキマサさんは土足のまま部屋にあがり、震えながら怯えた表情で独り言のように、「来た、来た、やっぱり来た···」
と言い、包丁を手に取り、玄関の前まで来て、何かを待ち構えている格好でじっと玄関のドアを睨みだしました。

さすがに、ただ事では無いと悟った五十嵐さんは、何も言えずその場から動けなくなりました。
しばらくして、ユキマサさんは少し冷静になり、悪いけど今日は帰ってくれと言うので、五十嵐さんは、ユキマサさんが心配でしたが、恐怖心もあり、家を出ました。
五十嵐さんは、そのまま家には帰らずに、ユキマサさんの幼馴染みで、よく三人でお酒を飲んだりする仲のケンジさんの経営する居酒屋に向かいました。

ケンジさんに、ここ最近、ユキマサさんの様子が尋常では無い事を泣きながら訴えかけました。
するとケンジさんは、「ユキマサがそうなったのには、心当たりがある。」
と語り出しました。

「俺とユキマサが中学の頃に、遊ぶ金欲しさに、近所の神社に夜中に行って、賽銭泥棒をしてたんだ。一度限りにしようと二人で決めてたけど、簡単に金が入る事が癖になって、その後も何回もしてたんだ。」

それが何の関係があるのかと五十嵐さんは思いましたが、最後までケンジさんの話しを聞きました。

「何回目か忘れたけど、ある時、後ろから声をかけられたんだ。何してるの?って、びっくりして振り返ったら、そこに見たことも無い、お婆さんが居たんだ、なんだお婆さんかと思って無視して、また賽銭を夢中になってかき集めてたら、そのお婆さんが、ユキマサの腕を掴んで、やめなさいってしつこく言うんだ、それでユキマサが···」

ここまで話すと急に黙ったケンジさんは、周りに誰も居ないか確認して、

「ユキマサが、思いっきりお婆さんの顔面を殴ったんだ、お婆さんは何も言葉を発せず、地面にぶっ倒れて、動かなくなって、さすがに俺もやりすぎだろって思ったけど、ユキマサはまた賽銭を必死にかき集め出して、もう行こうとユキマサの腕を引っ張る形で、逃げたんだ。少し逃げた所で、ユキマサが立ち止まり、お婆さんの所まで走って行って、お婆さんの上着のポケットを漁って、財布を盗んで、またこっちに走ってきたんだ。あの時のユキマサの笑顔が恐すぎて···」

五十嵐さんは、あの誰にでも優しいユキマサさんが、過去にそんな悪い事をしてたなんて、考えられませんでした。
ケンジさん曰く、そのお婆さんがどうなったかはわからないけど、その後は一回も賽銭泥棒はしていないと言いました。多分、そのお婆さんの呪いか、何かが今回のユキマサのおかしくなった原因だとケンジさんは言うのです。

確かにそんな悪い事をしたのなら、何かが起こってもおかしくはないと五十嵐さんは思いましたが、不意に落ちませんでした。なぜ、その過去が関係してるとケンジさんは言いきるのか、不思議なのです。
おそるおそるケンジさんに聞きました。

「でも、その事と今回の事は本当に関係しているんですかね?」

ケンジさんは申し訳なさそうに、言いました。
「関係してるよ、ついこないだ俺の所にそのお婆さんが来たから、寝てたら、人の気配を感じて、目を覚ましたら、枕元に居たんだ、あのお婆さんが。返せ!返せ!って言いながら、どんどん顔を俺の顔に近づけるんだ、あまりの恐怖に言ってしまった、俺じゃないですって。」
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コメント(1)
  • ユキマサさんの所業が怖すぎ…

    2021/03/01/15:22