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心霊

YoyoYoyoYさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

大叔父の葬儀
長編 2023/01/02 21:30 2,990view

その日、夢の中で歯が抜けました。
奥から2番目にある歯ですが、小学生の頃に銀歯の治療を受けていました。
(とうとう抜けてしまった、治療費は高く付くだろうな、セラミックの歯は高額って言うし、貯金を崩そうかな)と肩を落としたところで目が覚めました。

そして翌日の夢も、また歯が抜ける内容でした。
私は化粧台の鏡を覗き込んでいます。
口の中がジャリジャリするので、そっと口を開けてみると、やはり奥歯が抜けています。
口の中に残る抜けた歯が、とても気持ち悪いのです。
同じく治療した部位で銀歯が残っていました。

そんな夢が3日ほど続き、これは何かの知らせではないかと思い始めました。
「歯が抜ける夢」でネット検索したら、あまり良い意味ではありません。

(歯が抜ける夢とは・・・近々、親や身内に不吉な事が起きる可能性がある。また、亡くなる事を警告する凶夢です。)
私は嫌な気分でパソコンを閉じました。

当時、父方母方の親族だけでも50人はいました。
誰が該当するのか見当も付かず、ただの夢であってほしいと願いました。

数日後、大叔母から電話があり大叔父が亡くなったとの知らせが入りました。
往年の銀幕のスターのような、華やかで大柄だった大叔父は88歳の生涯を終えたのです。
葬儀のある京都府まで、泊りがけの参列に出向くことになりました。
「おじさん、11月11日に亡くなったんだけどね。死亡時刻が午後11時11分だったんだって。おばさんが不思議でしょうって言ってたよ」
自家用車で向かう車内で、母が話し始めました。
運命数で「1」と言うと、リーダー気質・野心家・魅力的な人物自信家・行動的な男性、などがあげられます。

大叔父そのままだなと納得しました。

「そう言えば、おじさんの家の近くには不思議なお寺があったよね。小野篁が地獄の閻魔庁の仕事に行くための通い井戸っていうのがあったんじゃないかな」

小野篁とは平安初期の官僚で、嵯峨天皇につかえていました。
文武両道で、学者・詩人・歌人としての側面も持つ多芸多彩な人物です。
ただ、「野狂」ともいわれるほど奇行も多く、遣唐副使にも任じられましたが病気を理由にボイコット、嵯峨上皇の怒りにふれ隠岐に流罪されました。

流刑地の隠岐に流される最中に詠んだ歌
「わたの原 八十島(やそしま)かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人(あま)の釣舟」は、小倉百人一首にも収録されています。

「前にさあ、おじさんの家に遊びに行ったとき参拝したことがあるんだけど、小野篁と閻魔大王の座像があってね、閻魔大王より篁の像のほうが怖いなって思ったよ」
私は、そっと覗いた扉の向こうから、こちらを凝視する小野篁の視線を思い出しました。
「閻魔大王の補佐って、ちょっと面白いけど不気味だよね」
大叔父も49日かけて地獄の十王に審判され、行く先を決定されるのかなと、京都と大阪を繋ぐトンネルの中で、ぼんやりと考えました。

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