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心霊

takeさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

夜釣りで見たもの
短編 2023/01/01 17:56 1,004view
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職場の上司のSさんに聞いた話です。
釣りが趣味で、若い頃は休日の前日は夜釣りもしょっちゅう行っていたそうです。
二十代の頃、バス釣りにハマッたSさんは『初のバス夜釣り』を敢行しました。
場所は山の麓にあって、周囲は人家もなく、雑木林に囲まれた広い野池でした。

一人でバイクで出かけたSさんは、池に着いた時、ちょっと後悔していました。
海の夜釣りは何度も経験していたので慣れていましたが、夜の池は、海とはずいぶん様相が違います。
まず周囲に誰もいない。虫やカエルの鳴き声はしますが、波の音がないので静かすぎる……。
ちょっと気味悪く思いましたが、せっかく来たのだから、と気を取り直し、良さそうなポイントで、釣り始めました。

何度かアタリが来て、夢中になっていると、時刻は零時を過ぎていました。
もう帰ろうか、あとちょっと続けるか……。
逡巡しながら、持ってきたお茶を飲んでいると、何かの音を聞きました。
ターン、ターン、ターン……と規則正しく。そう、まるでボールを突いているような。

雑木林に目を向け、鳥肌が立ちました。
十数メートルくらい離れた樹の下で、小さな女の子が鞠つきをしているのです。
こんな時間に……こんな場所で……あんな子供が……絶対にヒトじゃねえ!
音を立てたら気づかれる……Sさんはゆっくりと細心の注意を払って道具を片付け始めました。

ターーーーーーーーン!
すぐ背後でボールの音がしました。
「ねえ、おにいちゃん……」という微かな声を聞いたような気もします。
次の瞬間、Sさんは道具を放り出し、バイクに飛び乗って一目散に池を後にしました。
よく事故らなかったな、と思うスピードで山道を抜け、街に入った時はホッと一息つきました。
コンビニに入ってトイレの鏡で見た自分の顔色は真っ青だったといいます。

翌週の休日、友人についてきてもらって昼間にその場に行くと、Sさんの釣り道具がそのまま残されていました。
それから二度と、池で夜釣りはしていないそうです。

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