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心霊

psyさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

最後のご挨拶
短編 2022/12/11 11:14 1,074view
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私が老人ホームに勤めていた時の話です。

当時、私は生活相談員をしていました。入居案内や契約や面談をする仕事です。

ある時、ご夫婦で入居されることになった方々がいました。とても仲の良いご夫婦で、子どもたちも協力的でした。子どもは3人。どのご家族も本当は同居したい、面倒をみたいとの希望でしたが、最後まで2人で何も気にせず仲良く過ごしたいとの理由で、ご夫婦はそれを望みませんでした。

入院先からのご入居で、先に旦那様の方が施設へきました。奥様は2週間後に退院し入居する予定でした。しかし、退院まであと1週間というとき、私が自宅で入眠していると、誰かが枕元にいる気配がしました。
私には霊感なんてありませんので、家族かと思い起き上がりました。ふと目が合うと、ご入居予定の奥様でした。私は妙に冷静で、どうしたのか尋ねると、「ご挨拶にあがりました。主人と施設へ行くのが楽しみでしたが、叶いそうもございません。あなたにはご尽力いただきましたが、申し訳ありません。できることなら、主人より長く生きて見送り、その後に旅立ちたかったのですが、その後はあなたに主人をおまかせすることになりました。とても気がかりではございます。もし…もし、主人が施設での生活を不便に思ったり、私のいない世界に陰な気持ちを持ちましたときには、すぐにお迎えにあがりますので、そのときまで、どうぞお願いします。」と言われ、スッと消えました。

翌日、出勤後に旦那様を誘い、奥様のお見舞いへ行きました。その時は、意識もはっきりしており、ご夫婦で手を取り合って話していました。旦那様がお手洗いに行かれた時、奥様より「昨日はごめんなさいね。ありがとうね。最後にもう一度会えてよかった」と言われました。

施設へ戻ると、すぐに奥様が昏睡状態になったと連絡がありました。旦那様はそのまま病院へ戻り、子どもたちと共に奥様をお見送りされました。
通夜、葬儀が終わり、旦那様が施設へ戻られ、1ヶ月が過ぎた頃、どうやら他の職員へ外部のマッサージサービスを依頼していたのですが、いつまでも呼んでくれないとクレームを申されました。謝罪を行いすぐに手配をしたのですが、突然、もう生きていたくない奥様に会いたいと申されたのです。

その晩、枕元にご夫婦でいらっしゃいました。奥様が「やはり、主人は1人ではダメでしたね。お迎えにあがりました。あなたは、旦那さんより先に旅立ってはいけませんよ。先に旅立つ方は幸福感に包まれるけど、残された方は思い出に浸り後悔しながら日々を過ごすのだから。」と言っていました。旦那様は「ごめんね。妻の側が私の地元居場所なんだ。最後のご挨拶に。」と2人で手を取り合って消えました。

その瞬間、私の携帯が鳴り、旦那様がお亡くなりになったとのことでした。通夜葬儀の間、子どもたちから遺品整理をしたいからある程度仕分けをしていて欲しいと依頼があり、作業をしておりました。その中に、私への手紙がありました。今の彼と2年後に結婚すると思うから、互いに思い合う気持ちを大切にと書かれていました。
2年後、その手紙を見つけた日に、彼からプロポーズされ、結婚することになりました。彼にはその話はしていなかったので、ダブルで驚きました。

今でも、主人と喧嘩をしたり意見がすれ違い険悪になりかけると、ご夫婦の最後のご挨拶を思い出します。夫婦の絆を感じた、なんとも不思議な体験でした。

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コメント(3)
  • 今時珍しい夫婦にまつわるいい話で良かった。

    2022/12/11/20:13
  • いつまでもお幸せに

    2022/12/11/20:43
  • 貴方が、きちんと寄り添ってくれてるからこその心温まる体験だったのでしょう。

    2022/12/12/03:20

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