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妖怪・風習・伝奇

神助さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

野狐(やこ)になったお稲荷さん
短編 2022/12/09 11:52 3,544view
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私の母が高校生の頃に体験した話です。
母は東北地方の出身で、この時代の頃は所謂『拝み屋』的な人が各村々に居たそうです。
母が住む地域にもその手のおばあさんがいました。
元々うちの家系は多少霊感があり、母も時々この世のものではないものが視える人でした。
その日、母は学校から帰って来て、あと少しで家の前という距離まで来た時
いつもとは違う只ならぬ気配を背後から感じたそうです。
振り返りたい...でも見たらいけない気がする。
だけど気になる!
思い切って振り返ろうとしたその瞬間
「見てはダメ!!」
耳元で女の人の声が響いた。
あたりには誰もいない、声の主は見当たらない。

直感的にその声に従い急いで家の中に入りました。
居間には母の姉と母が居ました。
そしてこんな話をしはじめました。

今日の午前の出来事である。
町内のある一軒の家で奇妙な現象が一週間程前から続いていたそうな。
誰もいない二階からガタガタと何かが走り回る音がしたり、部屋に置いてある物の位置が変わっていたり。
更には住民が次々に怪我をしたり。
流石におかしいと思いその家の人は同じ町内の所謂『祓い屋』のおばあさんに相談する事にした。
おばあさんはすぐに気づいたそうだ。
「この家は代々お稲荷さんを祀っていたでしょ?」
家の主人はハッとなった。
「先代までは熱心にお祀りしていた、でも今はもう誰も…」

おばあさん曰く、もう誰も祀らなくなったお稲荷さんが顔を真っ黒にして怒り狂っている。
野狐(やこ)になっている。
人間は都合の良い時だけ祀り上げてきて富を与えてやった恩も忘れ数年経てば後はほったらかし。
本来ならもう必要なくなったらお稲荷さんにお礼を言って大きな稲荷神社に返すのが良かった。
でももう真っ黒になってしまったお稲荷さんは返す事は出来ない。
「仕方ない、野良犬に持って行ってもらうのがいい」
そう言っておばあさんはお札を取り出しお経を唱え始めた。
お稲荷さんをお札に一旦閉じ込め家主に渡した。
「家族全員で家の前立って道に背を向けた状態でこのお札を思い切り後ろに投げろ
そして絶対に振り向いてはいけない、戻って来てしまう。
野良犬に連れていかせるのじゃ」
家族はおばあさんの言う通りにした。

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