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不思議体験

アストロさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

異次元マンション
長編 2022/11/13 16:39 4,210view

ある駆け出し探偵の男が受けた依頼はこうだ。
「指定した地域一帯を監視してほしい」
怪しい人物が居たら報告してほしいと……。
ここまでざっくりとした依頼は初めてだった。そもそも「怪しい」とはどこを基準に判断すればいいんだ?
帽子を目深に被った怪しい依頼人にそれを尋ねても、「貴方の判断で構いません」とこれまた漠然とした返答が帰ってくるばかり。
普段ならもちろん断る依頼だが、特別な所は他にもあった。
報酬だ。
仮に毎日猫探しを3ヶ月続けても貯まらないような額が提示されていた。
余計に怪しいが、どうみても訳ありの依頼だ。高額報酬の理由も納得出来なくはない。
魅力的だった。
それに気になる情報がもうひとつ。

結果、依頼を受ける事にした探偵はとあるマンションの入口に立っていた。
これがこの依頼が気になったもう一つの理由…「ピッタリの監視場所に心当たりがある事」。
8階建てのこのマンションの屋上からなら、指定された地域を一望できる。
このマンションは……探偵の生家だった。
両親が亡くなると共に引き払ったが、監視すべき場所を聞いた時すぐに、子供の頃屋上から見た景色を思い出した。
慣れた街なら仕事もやりやすい。
とにかくちょっとでも気になる人間がいればメモや写真を撮る。
真面目に依頼をこなして、報酬をありがたくいただこう。

管理人に許可を取り、探偵はマンションの階段を登る。
アレコレ用意しておいた嘘の目的を話さない内に「どうぞお入りください」と、自分が建物に入る事を了承してくれたが、「その代わり、エレベーターは使わないでください」と管理人は言う。
何故だ?

「理由は私も分かりませんが……住人と会った時に問題になるから、とかなんでしょうかね」
何故他人事なんだ?誰かにこういう場合の対処を指示されているのか…
疑問はあったがまぁ、尋ねるまでもない。
とにかく探偵は見覚えのある階段を登り、屋上へとたどり着いた。
子供の頃登ったときよりも短く感じて、自分の成長、これまでの人生経験を実感する。
思い出を回想し笑みもこぼれていた。
どこか高揚した気分のまま依頼の事を思い出す。
今は午前中…その後、夕方まで街並みの監視を続けたが特に気になる人物はいなかった。
細かい部分まで気にしたつもりだが、ここまで違和感が見つからないのは逆に不思議なくらいだった。
次第に夜も更けてきた。何も起こらないまま、気づけば日付が変わる頃。
すっかり双眼鏡の跡が顔についてしまった事に気づく。
ひとまず今日の仕事は終える事にした。

1/4
コメント(1)
  • んー?ご両親は亡くなったのですよね?ちょっと私も異次元に迷い込んだのかよくわかりません。。

    2022/11/13/21:01

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