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意味怖(意味がわかると怖い話)

件の首さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

幻聴が聞こえたら
長編 2022/11/04 16:24 3,984view

『……殺せ、殺せ……』
 学校の授業中、突然、声が聞こえ始めた。
『前の……殺せ……こいつを……』
 声、というと少々感触が違う。
 電波のノイズ混じりのような音だった。
『……刺せ、心臓を……抉れ……捧げろ……』
 それが声だとするなら「前の席の同級生を殺せ」との内容が繰り返される。
 空耳かと思い、耳の穴に指を入れてみる。
 音量が少し変わった気がしたが、また声は聞こえ続けていた。

 家に帰り、ネットで調べてみると、声が聞こえる、いわゆる幻聴というのは、精神の病気にしばしば見られるものだと分かった。
 一昔は「神様の言葉」などとして扱われていたもののようだが、現在は病気の一類型に分類されているとの事だ。

 神様の言葉にしては物騒だった。
 昔の解釈をするなら、悪魔のささやきという感じだろうか。
 もしも症状を放置すれば、間もなく声のする状態が当たり前になってしまうらしい。
 当たり前になった後は、それが幻聴の類だと自覚出来なくなる。
 本当に聞こえている声と考えるようになるから、病気だと言われたら反発する。
 何よりも重要なのは、早期に診察を受けて、きちんと薬をのむ事だそうだ。
 薬、というと少し抵抗はあるけれど、自分で病気と分からなくなる病気、というところが何より怖い。

「……お母さん」
「なに?」
「私、幻聴が聞こえてるみたい。
 翌朝、少し早く起きた私は、朝食の後に母に話した。

「耳の具合じゃなくて?」
「うん。違うと思う」
「そう」
 娘の藪から棒の告白に、母はそこまで動じなかった。
 少し考えてから、母はスマホを手に取る。
「じゃ、お医者さん、行きましょうか」
「信じてくれるの?」
「あなたのつく嘘にしては、タチが悪いもの」
 嘘をつかないとは言われない辺り、理解されているんだか何だか。
 でも、不安がふっと解けていった。
「あ、近くにメンタルクリニックあるから、予約入れるわね。今日は学校休みにしときましょ」
「うん、ありがとう」

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