「霊水」って一体なんなのだろう

私が大学生の頃の話です。

私を非常にかわいがってくれた先輩がおり、彼は一見チャラいものの、実は非常に霊感が強く、時々不可解な言葉を言ったり、予言めいたものを口にする大変変わった人物でした。

そんな先輩とつるんでいた或る晩のこと、人気のない深夜の街を二人、ほろ酔い気分で馬鹿話を交わしながらよろよろと歩いていると、人身事故多発地帯として地元では有名なある交差点に差し掛かりました。

その時、不意に真顔になった彼が突如「気を付けろよ。変なの、一杯いるぞ・・・」と口走りました。私が驚いて彼の顔を思わず見つめると更に「ほら、寄ってきた。お前、つかまりそうだから走れ！」と先輩は強い口調で声を上げました。ところがその瞬間私の身体はどうしても動かず、その現象に大きな焦りと恐怖感を覚えました。

そんな私を見て先輩はバッグからPETボトルを取り出し、中に入った液体を私に向かって振りまきました。すると背後から突然「イテーッ！！」っという叫び声とともに水蒸気とも煙ともつかない白煙が上り、私の身体は急に楽になりました。

当初は唖然としていた私が我に返り、お礼と共にその液体のことを訊くと、先輩は「これ？霊水。魔除け。」と言い、私が分けてほしいと冗談半分に告げると、「やれないよ。修行してない奴が触ったら死ぬわ・・・」と呟きました。

未だにあの時起こったことと先輩の言葉の意味は分かりません。

先輩はその後本格的に宗教の道に入り、今は東南アジアで活動しているようです。