下の階の赤ん坊

何年か前の話だ。県外の会社に就職したため、親元から離れて初めての一人暮らしをすることになった私は、会社近くの不動産屋で、できるだけ安い物件を見つけることにした。
幸運にも築10年ほどで家賃3万円で、2階建アパートの一階にある部屋が見つかったため、私はその物件を見に連れて行ってもらった。

付近には大きな道路や墓もなく、ごく普通の住宅街。借りる予定の部屋も見せてもらったが、とても綺麗な部屋だった。事故物件かと疑って、某サイトを調べてみても、なにも載っていなかった。
これ以上の良物件は見つかるまいと思った私は、そこを借りることにした。

そして、入居1日目の晩。私は下の階から聞こえてくる赤ん坊の泣き声で目が覚めた。まぁ、夜泣きなんて珍しいことでもないし、すぐ止むだろうと待っていたが、いつまでたっても泣き止む気配がない。
イライラしてしまった私は、タバコを吸うため外に出て気がついた。
赤ん坊の泣き声など、下から聞こえるはずがないのだ。