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呪い・祟り

定礎
短編 2021/02/20 00:49 2,297view
ビルには「定礎」というのがある。ビルの入り口によくあるアレだ。
定礎とはいわゆるタイムカプセルのようなもので、中には建築当時の図面や資料、写真などが入っている。
そのほとんどはビルの竣工式の時に設置され、ビルが解体されるまで開けられることはまずない。

私が昔働いていた会社が入っていた、とあるビルの話だ。

そのビルは秋葉原の外れにあり、会社はその5階にあった。
1階から3階には小さな店舗があり、4階以上は会社や事務所が入ってる、いわゆる雑居ビルというやつだ。
ただ、このビルにはいろいろな噂があった。

私の会社には社長や私を含めて5人しかいなかったが、小ぢんまりとして居心地のいい会社だった。
特に3年先輩のTさんとは仲良くしてもらった。

Tさんは入社した時から、このビルに違和感を感じていたという。
Tさんしかいないはずなのに誰かが廊下を通ったとか、誰かの声が聞こえたとか、そんな話だ。
社長に聞いても、このビルは築50年近く経ってるから、他の階の声が聞こえたり気配を感じるんだという返事だったそうだ。
他の階の人に聞いても似たような返事で詳しい事は分からなかったらしい。
ここまでならよくある話かもしれないが、ただ私自身はそれらしいことは何も感じた事はなかった。

そんな噂のせいか、このビルの会社は長くても3年、早ければ半年もしないで出ていくというのだ。
確かにここ何年かは空室も多くなり、ビルのオーナーさんは相当苦労しているという話も聞いた。

そんな時に、オーナーさんが亡くなったと聞いた。後でわかった事だが、自殺だったそうだ。
その結果、銀行や債権者の協議の上、この価値の無いビルを解体して土地として売却することになった。
ビルに入っている会社や店舗は立ち退きを余儀なくされ、私の会社も移転せざるを得なくなった。
この時点で私は会社を退職してしまったから、ここからはTさんから聞いた話になる。

会社は幸い近所に引っ越しすることになり、Tさんは出勤途中に毎日そのビルの前を通ることになった。
Tさんは工事の作業員と顔見知りになり、解体の様子をいつも聞いていたそうだ。

ビルの解体工事がいよいよ始まるという頃の事だ。
「定礎」の中を工事の作業員が確認すると、写真や資料などが入っていた。
ところが、それ以外に見慣れない金属のケースが一つ入っていた。
その金属ケースはどうも市販されているようなものではなく、そのスペースに合わせて作られたオーダー品のようだった。
金属ケースは透明のビニールに丁寧に包まれていて、綺麗にテープで塞がれていた。

作業員はどうしてもそのケースが気になり、このビルの事を知っているTさんに、一緒に中を見ようと誘った。
翌日、昼休みに抜け出したTさんと工事責任者、作業員の3人でケースを開ける事になった。
作業員は丁寧にテープとビニールをきれいに剥がしてケースを取り出し、その蓋を開けた。
中に入っていた梱包材を取り出すと、食材などを入れるファスナー付きのビニール袋がいくつか出てきた。
その中身を見て3人は同じことを思った。
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