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呪い・祟り

件の首さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

紫の鏡を忘れたい
短編 2022/10/25 21:02 2,127view

 呼び出されて来たAの部屋は、高校時代と大きく変わっていなかったが、オカルトグッズは増えていた。
「1日早い20歳の誕生パーティーでもやるの?」
「……紫の鏡を忘れられないの。何でも良いから、話しかけて! 忘れさせて!」
 私の問いに、彼女は泣きそうな顔で言った。
 「紫の鏡」とは、20歳までに忘れないと不幸が訪れるという都市伝説。そしてAの20歳の誕生日は、1時間後に迫っていた。
 私の返事を待つ前に、彼女は用意したアルコール入りのチョコレートをむさぼり始めた。酔ってやり過ごすつもりだ。
 あくまで合法な菓子を選ぶのも、気弱な彼女らしい。
 呼んだ割りには会話は弾まず、彼女は食べる方に集中していた。
 ――残り5分。
「――UMAとしての雪男はぁ……」

 Aの呂律が回らなくなっている。
「ゴリラと――うぷっ!」
 彼女は部屋から出てトイレに駆け込んだ。
 溜息交じりに時計を見ると。
 午前0時を過ぎていた。

「あああ」
 トイレから出て、部屋に戻って来たAは叫ぶ。
「忘れてない! ダメ、ダメダメダメ!」
 叫びながら、壁に頭を打ち付ける。
 私は気圧されて出て行こうとする。

「なんで逃げるのぉ!?」
 血にまみれた顔で、Aがすがりついて来る。
 形相は、悪霊そのものだった。
 私はAを突き飛ばし、部屋の外に出た。
 廊下には、パジャマ姿のAの両親がいた。
「娘さん、危ないんじゃないですか!?」
 両親は、のんびり顔を見合わせる。
「でも、紫鏡、忘れなかったんでしょう?」
「じゃあねぇ?」
 なんなんだ。
 一刻も早く、この一家から距離を取りたい。靴紐を結ぶのもそこそこに、私は逃げ帰った。

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コメント(1)
  • なんなんだ

    2022/11/05/18:44

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