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呪い・祟り

まるさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

異世界へつながる八百屋
短編 2022/10/22 12:57 3,176view
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それは私が住む、九州のとある田舎町の話です。マジでやばい話なので具体的な地名は伏せます。

私が小学生の時、どこからともなく、誰が言い出したかももうわからないような都市伝説的な話が大流行したことがありました。休み時間や放課後になるとその話でもちきり。例えば有名な「こっくりさん」みたいに、怖い話と実際の手順とがあったんです。皆実際にやってみようとか行ってみようとか、手順を試した人は行方不明になったとか…それはもう毎日ひっきりなしに話題に上がりました。
それは、現代風に言い直すと「異世界に繫がる八百屋」です。当時は、ワープできる八百屋があると噂されていました。現代のように異世界の怖い話が取り沙汰される前でしたから、「その八百屋に行くと、知らない場所にワープできる」という都市伝説として話が流行っていました。
手順は、●●町にある、シャッター街となった12店しか並んでいない小さな商店街の通りを、雨が降っている金曜日の夕方17時半に赤い傘を差して八百屋の前を通る、というものでした。わりと条件が細かくて、なかなか試せないため噂話だけがどんどん肥大化し、とうとう私のクラスの男子生徒3人が「実際にやってみる」と言い出したのです。そのうちの一人が私の幼馴染でした。

実際に実行できるまでに2週間かかりましたが、とある金曜日に雨が降ったのです。
土砂降りではなく小雨が終日降り続くような天気予報で、窓の外は静かにしとしとと雨が降っていました。私がちょうど赤い傘を持っていたので、幼馴染に頼まれて傘を交換し、赤い傘はその3人組が持っていきました。
ここからはその幼馴染から聞いた話です。実際の手順を試したところ、そもそもその通りに八百屋なんて無く、結局何も起きなかったそうです。
ただ一人を除いては。

私の幼馴染が、もう帰ろうと他の2人に呼びかけようとしたとき、一人が「えー、この八百屋だけ開いてんじゃん…」と口走ったそうです。しかしその男の子が見ていたのはお店とお店の間にある路地。何もない道を見て八百屋だと言っていたのです。
私の幼馴染はからかわれていると思い、「ふざけんなよ、帰るぞ」と声をかけたそうですが、そのまま男の子はふら〜っと路地へ歩いていってしまいました。
ちなみに赤い傘を差していたのは私の幼馴染。路地へ入っていった男の子じゃなかったそうです。
「おい!どこいくんだよ!」と残った二人が呼びかけても振り向くことなく、男の子はそのまま路地を進んでいってしまい、残された二人は時間もだいぶ遅くなっていたことからもう先に帰ることにしたそうです。

そして土日を挟んだ翌週の月曜日、突然朝から全体集会が開かれ、校長先生から「●●町の商店街でいたずらしてはいけません、今後立ち入り禁止です」と注意喚起をされました。幼馴染達のことだな、とよぎりましたがふとそこで、男の子が休んでいることに気が付きました。
その日担任の先生はその男の子について何も触れることなく、休み時間に幼馴染に聞いても「知らない、具合でも悪いんじゃないか」としか言われません。幼馴染から赤い傘を返してもらい、そのあとは話すこともなかったので男の子のことはいつの間にか忘れていました。
しかし2日経っても男の子は出席せず、担任の先生も相変わらず何も言いません。クラスメイトが質問しても「お休みです」としか言われず、またもや学校中で「あいつはワープしたんだ」と例の八百屋が噂になり始めました。

そしてちょうど一週間経った金曜日、同じように雨が降ったんです。

私は赤い傘を差して家まで帰っていました。そこで友達が私の傘を見て「ひっ」と小さく悲鳴をあげたんです。私の傘に3つ、大きな大人の大きさの真っ黒な手形がついていたんです。
きっと私は幼馴染がいたずらしたんだと思って、幼馴染を問い詰めますが落としたり汚したりなんて絶対にないし、本当に知らないとしか言われませんでした。じゃあ一体誰が…?気味が悪くなった私は傘を捨てました。

その翌週、ずっと休んでいた男の子一家は急に家族の都合で転校したと担任の先生から言われました。その同じ週に商店街の取り壊しが決定しました。

これは後から他の友達に聞いた話ですが、実はその商店街、条件を揃えて通ると本来は店があるはずのない路地の部分に13店舗目である八百屋が現れるそうです。その八百屋に入ってしまうと、店主に野菜として売られるとかバラバラにされるという怖い話もありましたが…。
友達が言うには、数日その人は行方不明になり、おかしくなって戻ってくるそうです。
というのもその話を教えてくれた友達は、転校していった男の子の隣の家の子で、男の子が休んだその日は警察が来たり、その数日後には隣から奇声や激しく唸る低い動物の声のようなものが聞こえてきたそうです。
友達は直接見ていませんが、親同士の噂話で聞こえてきた話に「あの男の子が1日行方不明になって警察に保護された後、四つん這いで歩くようになった」とか、「まるで犬のように手を使わず皿から直接物を食べているところを見た」などと言われてるのが聞こえたそうです。そしてしきりに、男の子が「かえるなかえるなかえるなかえるなかえるな」と唸っているとか…。

その八百屋に迷い込んだ人は、一体どんな世界で何を見てきたのか。何をされてしまったのか。男の子が今どうなってしまったのかも闇の中ですが、現在その取り壊されたはずの商店街跡地には、停めた車に黒い手形がつくと噂の駐車場ができたそうです…。

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コメント(2)
  • こわいてすね。

    2022/10/22/21:11
  • 怖い。

    2022/10/24/14:44

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