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不思議体験

翡翠さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

姉と私と雪男
短編 2021/02/19 02:55 2,661view

とてもとても昔の話。

当時の私は4歳頃で姉は3つ離れています。
私が産まれ育ったのは関東平野のド田舎で、山も無ければビルも無く畑と田んぼに占領されたド平野でした。

近くには関東ならではの川が流れており、その時代は土手下の河岸に牛が放牧されていました。

そんな田舎の子供の私が姉と体験した不思議なお話です。

両親と姉と4人で住んでいた自宅のすぐ裏は母の実家で、祖父母と叔父(2人)が暮らしていました。
その頃の両親は共働きでしたが、優しい祖父母や叔父達に甘やかされていたので寂しいとかは無かったです。

雪が降る日でした。
遠く離れて暮らしているもう1人の叔父(母は5人姉弟)が帰省していたので、今に思えばお正月だったかもしれません。

賑やかな祖父母の家で遊んでいた私は、ふと玄関の引き戸が開いていたのが気になり足を止めて外を見ていました。

(ゆきがいっぱいだねー、さむいねー)
そんなたわいもない思考で見ていたのですが、ひょいと右から現れた者に目が釘付けになりました。

全身が白い毛(少し黄ばんでいなくもない)で腕が妙に長い何か。
前屈みの姿勢のままで玄関前を通過していく筈だった何かは、あろうことか私の視線に気づいたらしく立ち止まりこちらに顔だけを向けました。

黒い猿のような顔でした。
ほんの数秒の対面でしたが私の思考は長く停止していた気がします。

やがてそれは当たり前のように左方向に歩みを進めて視界から消えました。
私はその瞬間に大声で泣き叫びました。

「うわーん!ゆきおとこー!」

叔父の1人が駆けつけてパニックになっている私を掬い上げた刹那、今度は姉の叫び声が響きました。

違う叔父が「何だ!どした?」と姉の声の方へと駆け寄ります。
姉はトイレから出て来ました。
私同様に震えて泣いています。

叔父「翡翠も泣いてるけど姉ちゃんは何があったんだ?」

姉「トイレの窓からゆきおとこが覗いた」

雪男の進行方向にはトイレがあり、昔のトイレの作りには2箇所の窓がありました。
汲み取りのトイレでまたがり用を足していた姉は私の叫び声が聞こえていたそうで。
(ゆきおとことか言ってるーw)
と思った瞬間に下の窓(横に細長い)がガラリと開いて黒い顔がアップで覗いたと言いました。

その騒動で叔父や祖父母が言うには
「カッパ着た隣のハルオさんだ」だの
「住所不定の放浪している人」だのと。

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コメント(2)
  • こういう話、すごく好き

    2021/02/19/07:09
  • 当時は怖かったのですが、今は笑い話の1つで友人に聞かせたりします。(作者)

    2021/02/19/11:55

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