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妖怪・風習・伝奇

件の首さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

かごめかごめ
短編 2022/09/20 22:49 1,947view
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 昨日、高校時代の友人から聞いた話。

 幼稚園の頃、園庭で彼女達はかごめかごめをして遊ぶ事になった。
 順番に鬼をして、後ろの人を当てていき、最後にA子の番になった。
 A子はあまり頭の回転が早い子ではなかった為、友人達は彼女をなにかとからかっていた。
 A子がしゃがんで目を瞑ると、友人達は歌いながら回り始めた。
 だが、徐々に距離を取り始め、そして歌が終わる前に皆、A子独りを残していなくなってしまった。
 友人達は園舎の陰に隠れ、A子が目を開けて驚く様を期待して眺めていた。

 A子は目を開けて立ち上がった。
 それから、真っ直ぐ友人達のいる方向へ歩いて来た。
 友人達はあまりに早く気付かれた事に驚きつつも姿を現し、「冗談だよ」と済ませようとした時。
 A子は一番近くにいたひとりに掴みかかると、耳を噛みちぎった。
 咄嗟に保育士がA子を取り押さえた事で、それ以上の事は起こらなかったが、A子はいつまでもくちゃくちゃと噛みちぎった耳を咀嚼していた。

 大人になって、友人はかごめかごめが降霊術であるという説を知った。
 真ん中に誰も入れずに行うと、神が降りてくるが、そこに素質のある者がいれば憑依し得る。

 古来、カミは「鬼」の文字を当てる。
 輪は内外を分かち悪しき者を退ける結界だが、彼らは途中で輪を破ってしまった。
 当時の記憶を辿ると、A子は砂場を背に、園舎を前にしていた。立地から考えて、背後は北東に当たる。
 これは古い言い方で丑寅と呼ぶ。
 鬼門と呼ばれる鬼が訪れる方角だった。

 友人は怯えた顔で見せたニュース記事には、A子が殺人容疑で逃亡中、とあった。
 今朝、気になって連絡を取ろうとしたが、返信がない。

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