生霊が残った借家

知人の近隣で起きた話です。仮に、知人をAと呼びます。

A宅の数軒先に借家の一軒家があり、ある家族（仮にB家とします）が住んでいました。Aとは顔を合わせれば挨拶をする程度の間柄でしたが、あるときからB家では旦那さんの姿しか見かけなくなったことに気づきました。別の近所の人に聞くと、奥さんが浮気をして子どもと共に出ていったそうで、旦那さんだけが住んでいるとのことでした。

やがて、旦那さんも一軒家を持て余したのか引っ越していき、また別の家族が移り住んできました。

Aが違和感を覚え始めたのは、それから1年ほど経ってからです。その一軒家の借家の住人が、やけに入れ替わるのです。一軒家タイプのその借家はなかなか住人が離れず、奥さんの浮気によって一家離散したB家も、長いことその家に住んでいました。

それがB家が引っ越して以降、すでに2家族がその借家から出ていったのです。2家族とも半年ほどで出ていった計算となります。

その後、間もなくして新しくC家が入居してきたので、Aは何となく注意してその様子を見守っていました。そんなある日、道端でC家の奥さんに呼び止められました。

「おかしなことを聞くようですが、前にウチに住んでらした方で、長身の眼鏡の男性はいませんでしたか」

Aはすぐに、B家の旦那さんを思い出しました。

「ええ、一年ほど前に長く住んでいた家族の旦那さんがそんな感じでした」

後に不動産屋から話を聞くと、その借家の住人はみな同じ男の姿を見たとのことでした。

ただ、B家の旦那さんは亡くなったわけでもなく、当然ながら借家にも一度も近づいていないそうです。

その後、テレワークをするために独身の若い男性がその借家に引っ越してきたのですが、男の姿は現れていないようです。B家の旦那さんの生霊が、仲の良い家族を羨んでいたのでしょうか。