奇々怪々 お知らせ

意味怖(意味がわかると怖い話)

ねこじろうさんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

出来れば知りたくなかった父の秘密
長編 2022/09/13 00:47 14,243view
1

ゴールデンウィークに家族で、九州北部にある俺の実家に帰った。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

郊外にある典型的な分譲地の一画にある家で、公務員だった父が昭和のころにがんばってローンを組んで買ったものだ。
100坪ほどの土地の上に建てられた2階建ては、昔とちっとも変っていなくて、到着するとすぐに俺の頭の中は幼いころにタイムスリップすることができた。
今年80になる母が、少々曲がり気味の腰を庇いながら、俺と妻そして一人息子を玄関で出迎えてくれた

「昔と変わっていないでしょ」

西向きの大きなサッシ窓の傍らに置かれた食卓テーブル。
そこに並んで座る俺と妻の前に、母がお茶の入った湯飲みを置きながら言った。

確かに家の外も中も、ほとんど変わっていない。
変わったことといえば、

父が他界して既にいないこと、
母がひとまわり小さくなったこと、そしてその艶やかな黒髪だった髪が真っ白になってしまったことだろう。

窓の向こう側にある広い庭で、息子の大輝が夢中になって遊んでいる。
小学校低学年の男の子というのは、だいたいそうなのだが、探検ごっこが大好きなのだ。

庭の東側に一本だけある大きな柿の木。
その側にある小さな池。
そして周辺にある手入れのされていない植え込み
あのときのままの庭の情景だ。

ただちょっと違和感を感じさせるものというと、庭の片隅に隠れるように建つ小さなプレハブ小屋だろう。
変わり者の父が、俺の自立心を育てるために建ててくれたものだ。

中学校から高校まで俺は、この小屋を自分のアジトにしていた。
学校から帰ると、真っ直ぐこの小屋に入り、好きなギターの練習をしたり、夜遅くまでコミックを貪り読んでいたものだ。

どうやら大輝もその存在に気付いたようで、ドアノブを開けて、そっと中を覗きこんでいた。

翌朝俺は、なぜだか早く目か覚めた。
昨晩は夕食の後、和室に敷かれた布団に川の字になって親子三人寝たのだが、ふと横を見ると、妻はいるのだが、息子の大輝の姿がない。

「また庭で遊んでいるのかな?」

俺は横で寝ている妻を起こさないようにして、パジャマのまま庭に出た。
年季の入った柿の木や、かつては鯉が泳いでいた池を横目にしながら、片隅にあるプレハブ小屋の近くまで歩いてみる。
すると中から、大輝の声が聞こえてきた。

「だからさあ、ねぇ、お外で一緒に遊ぼうよお!」

1/5
コメント(1)
  • 出来ればそのビデオ売ってほしかったわ。

    2023/07/15/17:19

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。