キャバクラのボーイ風の若い男

今から15年くらい前の話です。
あれは高3の文化祭が終わり、打ち上げでファミレスに行った後の帰りでのことでした。
夜10時近くに駅前でクラスが解散したあとに、当時の友人含めた３人で駅前付近をぶらぶらしていました。

しばらく雑談をしながら歩いているうちに当時の私たちには馴染みのなかった駅の裏通りに足が伸びていました。どちらかといえば３人とも真面目な方で、普段であれば絶対に足は伸ばさないのですが、何故か吸い寄せられるように足を運んでいました。今にしてみれば文化祭後の盛り上がったテンションのせいかもしれません。

裏通りを少し歩いていると、友人の一人が人気の無い古いビルの前で茶髪のキャバクラのボーイ風の若い男性がじーっとこちらを見ているのに気がつきました。最初は「場違いな奴がいるなーって思われてるんじゃないか?」とか「こんな時間にこんなとこに居たら警察に通報されるんじゃねーの?」等と友人と話していたのですが、その男性はこちらに向かって声をかけることもせず、他の客に声掛けもせず、店に報告することや携帯電話で連絡する様子も無く、只々こちらをじーっと見ていました。
少し気味が悪くなりはじめた頃に、視線に耐えかねた友人の一人が「あの・・何か？」と恐る恐るその男性に話しかけると、その男性がニヤッと笑ってこう言いました。
「・・俺が見えるんだ・・」

その男性の発言にすっかりビビった私達は逃げるようにその場を立ち去りました。
友人の姉から５年前にそのビルに入っていたクラブのボーイが、クラブ内でのいじめが原因でそのビルのトイレ内で亡くなったと聞いたのは、その男性に声をかけられた１０日後のことです。