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妖怪・風習・伝奇

四川獅門さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

狐狸妖怪 二題
短編 2021/02/16 10:38 3,396view

狐狸妖怪①

深川さんが7才の時の話だ。彼女は妹とおもちゃの取り合いで喧嘩していた。

「これお姉ちゃんのだからとらないで!」

「ほしい!ほしい!ちょうだい!」

あまりの妹のしつこさに叩いてやろうかと手を振り上げた時、ある事に気付いた。
泣き喚く妹の後ろの本棚の上。
50cm程、全身が赤黒い人型のモノ。本棚に座って足をぶらつかせている。
姉の唖然とした顔を見て、妹もそちらに視線をやる。

「きゃああああああ!!」

2人は同時に悲鳴を上げ、母親を呼びに行った。母親と部屋を見に行ったが、既にそれは居なくなっていた。

「裸で、全身が真っ赤。頭に角が生えてました」

深川さん姉妹は今でも必ず節分に豆まきをする。

狐狸妖怪②

武田さんは隣街の港で釣りをするために、街境の林道を走っていた。

30分程で隣町へと出るはずなのだが、
林道へ入ってそろそろ2時間が経とうとしていた。

林道はほぼ一本道、道を外れたとしても脇道はオフロードなので間違えるはずはない。どこまでも同じような景色、まるで同じところを走り続けているかのようだった。

スマホは圏外。日も暮れ始め、だんだん不安になる。

さらに20分程走ると、道路沿いに掘っ建て小屋を見つけた。近づくと小屋の外に丸刈りの老人いて、地べたにあぐらをかいている。

『 助かった……』

停車して、道を訪ねた。
老人はにこやかに答えた。

「道ってあんた、ここ一本道だよ。まっすぐ行けば国道に出るから大丈夫」

武田さんは老人にお礼を言ってまた走り出した。
すると、10分程で国道に出た。既に日は暮れていた。

『今日はもう帰ろう……』

国道沿いのコンビニで、お菓子や飲み物を買って、林道へと引き返した。
老人がいた場所の前へ差し掛かったが、小屋が無くなっている。
車を停めてよく見ると、老人が座っていた場所には、小さなお地蔵さんがあった。

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