奇々怪々 お知らせ
           
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心霊

悶(もだえ)
中編 2021/02/15 21:07 5,614view
体験者 藤木 孝広 (仮名)

2017年12月 S県某所

藤木さんは田舎から上京し数年間都内のIT企業で働いていた。
度重なるパワハラとサービス残業に心折れた彼は、地元の中小企業へ転職した。

実家に頼る事を憚った藤木さんは、家賃2万円弱の古いアパートに引っ越した。どんなにボロいアパートでも、彼にとっては都会より居心地が良かった。

引っ越して1ヶ月程経ったある日、藤木さんの元に小学校の同窓会への誘いが届いた。
会場がアパートから近いのと、独り身の寂しさから参加を即決した。

同窓会当日、アパートから徒歩15分程の場所にある居酒屋へ向かう。懐かしい街並み。みんなどうしているだろう。
期待と、一抹の不安。童心に帰ったような気分だった。

藤木さんが会場に着いた頃には、参加者全員が揃っていた。みんな一斉に彼を見た。
懐かしい顔ぶれ、本当に20年前の同級生達がそこにいる。
皆、自分との再会を喜んでくれた。
仲良くしていたスポーツ少年の久保くんがビール腹になっていたのを笑ったり、地味だった女の子がモデルのように美人になっていたり、まるで夢を見ているようだった。

次々に酒や料理が配膳される中、奇妙な事が起こっていた。
誰も手を付けないオレンジジュースやコーラが、長テーブルの上に増えていく。

「このコーラ誰の?」

「オレンジジュース来たよー。」

5杯、6杯、誰も手を付けないジュースのグラスがテーブルの一角を占領していた。
それを見た久保くんが、こんな事を言った。

「アイツも来てんのかな。」

全員ピンと来たようだった。六年生の時に亡くなった上野君の事だ。藤木さんは特に、上野君と仲良くしていた。親友だった。
各々が上野君との思い出を語り出す。
やんちゃで、明るくて、みんなの中心だった。先生にも好かれる子だった。
ある日突然、上野君は3階の教室の窓から飛び降り帰らぬ人となった。
理由は誰にも分からなかった。

そんな話になっても、誰1人怖がったり気味悪がったりしなかった。
藤木さん1人を除いて。
藤木さんは嫌な汗をかいていた。
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記事編集(作者用) 作者プロフィール
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コメント(3)
  • 良い締め方ですね、素敵です

    2021/02/17/05:43
  • オチが怖すぎる

    2021/02/19/18:41
  • 素晴らしい。全体の雰囲気も、締めの一言も……
    怖い!

    2021/02/20/14:59