奇々怪々 お知らせ

不思議体験

youchiさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

祖母の看病をしてくれた人
短編 2022/08/16 15:43 849view

私の祖母は末期の胃癌で亡くなったのですが、闘病生活は壮絶なものでした。
本人は手術をして治ったものと思っていましたが、実際には開腹したものの、手のつけようがなく、そのまま縫合されたのでした。余命は数週間から一ヶ月。本人は家に帰ることを切望していました。
かなり容態が悪くなっていたものの、まだ体力があるうちにと、主治医に相談し最後の外泊許可がおりました。本人は治って退院するのだと信じていたので、それは嬉しそうでした。帰宅の準備をしていると祖母が「主治医のA先生と看護師のKさんには本当にお世話になったから何かお礼がしたいわ。デパートでネクタイとスカーフを買って渡したいから私の代わりに買ってきてちょうだい」と母にお金を渡してきました。母も私もまたすぐに病院へ戻ることがわかっていたので、その時はデパートへ行ったことにして、帰宅した祖母に「先生と看護師さんにはちゃんとお礼を渡しておいたよ」と伝えました。祖母は看護師のKさんのことが本当に気に入っていたようで「Kさんのおかげでここまで回復した」
「あんなに若くて気立ての良い娘さんは見たことがない」と何度も話してくれました。病室で何人かの看護師さんと会いましたが、そのうちの何方かがKさんだったのでしょう。今度お会いしたらちゃんとお礼をしようと家族で話しました。ほどなくして祖母は再入院となり、吐血や下血が起こるようになり意識が混濁していきました。そんな中でも「Kさんが体を拭いてくれた」「ゆうべは苦しかったけど、ずっと手を握っていてくれた」と祖母は何度も言っていました。それから数日後、祖母は息を引き取りました。
葬儀の準備やその煩雑さから、主治医のA先生と看護師のKさんへのお礼をすっかり忘れていたのですが、このままでは祖母との約束を破ってしまうと、母が急いでデパートへ赴きネクタイとスカーフを購入してきました。その足で病院へ向かうと、ちょうどA先生の外来の日で、すぐに会うことができたそうです。ところがKさんのことを話すと、A先生とそこにいた外来の看護師さんが顔を見合わせて「KさんてあのKさんのことかな?あの人、戻って来てるの?いや、そんなはずない」と怪訝そうに言うので、祖母がとてもお世話になり、いつもKさんにお礼してほしいと言っていたことを伝えたそうです。ところがKさんは確かに祖母の病棟に勤務していた看護師さんなのですが、何年も前に退職しているとのこと。きつねにつままれた母は、病棟まで行って再度確認したそうなのですが、同性の看護師さんはおらず、また若くて気立ての良いKさんという看護師さんは、以前確かにこの病棟に勤務していたが、何年も前のことなので祖母と会っているはずがないと言われたそうです。「Kさん」という名前はとても珍しく、私はこの時にしか聞いたことがありません。祖母が他の看護師さんの名前を間違えて覚えていたと結論付けるには無理がありますし、実際、以前勤務していたという事実もあります。「Kさん」は、退職をされているというだけで、亡くなったわけではありません。
祖母の看護をしてくれた人は、一体誰だったのでしょうか..

この話は私たち家族の間で長い間「おばあちゃんの不思議な話」として語られているものなのですが、月日が流れ、先日私の娘の彼にこの話をしたところ、
「この世の中に見えているものって、全部テレビゲームみたいなもので、自分の意志が具現化しているそうですよ。テレビの真っ黒な画面にコントローラーで次の画像を写すみたいな。それが時々バグって、過去のものが見えたりする。そういうことなんじゃないですか?」
「バグも更新されていくから、最近落武者の霊を見たなんてあまり聞かないと思いませんか?」
私たちの見ているこの世界とは。

1/1
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。