スタンダードな復讐劇

　たいていの占い師は物騒なタイプの術の代行を受け付けていません。なぜなら「あいつを合法的に消して欲しい」「できるだけ苦しめて殺して欲しい」という依頼があまりに多いからです。もしその依頼を全て真面目に受けていたら、きっと100人や200人を死なせる程度ではとても足りないでしょう。もしかすると1,000人、2,000人でも足りないくらいです。

　それはさておき。「お前がやらねえなら、俺が自らやるから（呪い殺してやるから）やり方教えろ」という骨のある奴がいました。たいていは文句を言ったり、「本当はできないんでしょ詐欺師！」などと言って去っていくので強い想いを持って「お前がやらんなら俺がやる！」と言い切るその態度はある意味すがすがしくすらあります……方向性は思いっきり間違っていますが。しかもその人は「俺がどうなってもいいから奴に復讐したい」と言うではありませんか。普通、呪いやら黒魔術やらそういったものは実行すると自分やその周りにその分の厄が返ってくるものです。ことわざにも「人を呪わば穴二つ」とありますよね。

　まあ、結局は私は教えなかったのですがそうしたところでこういう人は自分で調べて実行するものです。聞いたところによると、彼が実行したのは「松葉の呪い」。当時の2chなどでわりと盛んに使われていた呪法です。詳しいことは省きますが、結論から言えば彼のターゲットは事件を起こし、社会的に死にました。一方で彼もまた大病を患い、仕事を続けられなくなってしまいました。もっとも、こうなっても彼にとっては本望だということらしいですけどね……。

　しかし、そんな行動力や意志があるなら私は自身が幸せになる方向にエネルギーを使った方が良いと思いました。もちろん、自分が死んでもいいくらい許せない奴がいるという気持ちは分かるのですが、自分が物理的に、あるいは社会的に死んだら仕方がないですしね……。

　なお、「松葉の呪い」は自分の弱さを断ち切るなどポジティブな使い方もできます。あるいは相手を殺しまでしなくとも、これ以上のトラブルを避けるために単に離れるということのためにも使えるので、興味のある方はぜひ。復讐というのは魔術的な手段にしろそうでないにしろ幸せは生まないものです。