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心霊

morganさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

D棟の3階
長編 2022/07/27 21:42 2,082view

私は、高校生の頃、関東のとある県にある、寮付きの中高一貫校に住み込みで勉強していました。

関東で、県内では東京にほど近いベッドタウンであるとは言えども、学校の周りは碌に街灯もなければ、少し歩けば真っ暗な公園と鬱蒼とした田んぼをかこう林があるような地域で、中学生として東京からその土地に独りで旅立った私にとって不安はぬぐえないような場所でした。

私たちの寮は、A棟からD棟まであって、私と同級生はD棟に住んでいました。

その寮は、学校が設立された45年前、つまり昭和の後期に建てられた古い4階建ての建物で、一応しつらえられた寮門を通ると桜の木や藤棚、メタセコイアやモミジが植わっている道を奥まで進む途中に、A棟、B棟があり、最奥にC/D棟が連結して建っているというような作りでした。

そこで12歳の頃から男子運動部の先輩に怯えながら暮らしているのが私でした。

サッカーや野球、バドミントンやテニス部の生徒ばかりなので、部屋は荒れ放題で汚いし、永遠に片づけられないでたまったコンビニのゴミが臭いし、生活環境としては最悪でした。

そんな私も同じように運動部の同級生の友達を作り二年、三年が経過したころのことです。

うちの学校の寮には特殊な習慣があって、平日は夜の二時間半を机に座って勉強する時間にしようという取り組みがありました。

その影響で、思いっきり遊ぶことができるのは週末と祝日だけになっていて、その土曜日もほとんど唯一の休みをみんなで過ごそうという話になっていました。

私自身は大して真面目に部活をやっていなかったのでそうでもなかったのですが、まじめに運動部に参加していると朝練から始まり放課後も毎日のように練習があるほか、日曜日も練習や練習試合があるので、心の平穏が訪れるのは土日の午後しかなかったので、いつも午後から思いっきり遊んでいました。

その日は、近くのショッピングモールのレストランに行ったり買い物をしたりした後、寮の食堂で夕食を摂り、寮に帰ってくる頃には日が暮れていました。

それで、夜の点呼が終わった後に、平日であれば勉強時間であるはずの時間を、私たちはかくれんぼに当てることにしました。

範囲はD棟に制限して、隠れました。私は、1階と2階のどちらに隠れようか迷った挙句、結局3階の空き部屋のロッカーに隠れることにしました。

D棟の3/4階は、誰も使っておらず、うるさくて明るい2階までとは対照的に暗くてしん、としていました。

部屋に据え付けの古いロッカーはささくれ立っていて、ささくれが刺さらないようにそーっと中に入ると、扉を閉めて息をひそめてじっとしていました。

体感的には30分近くがたった後、どたどたどたと足音がして、自分のいる部屋の前を誰かが駆けていくのが聞こえました。と同時に、同級生の私を探している会話も聞こえてきました。どうやら鬼は2階までを捜索し終え、あとは3階より上を探しているのだな、と思いました。

そのまま彼らは階段に引き返していったので、しめしめ、と思って、また10分くらいすると、今度は階段のほうから叫び声が聞こえて、「もうかくれんぼは終わったぞー」「出てこーい」という声がしたので、私は部屋から出ました。

すると彼らはそこにいて、「なーんだ、そこにいたのかぁー」というようなことを口々に言っていました。

私もその集団に加わると4階の奥の方で最後の一人を見つけました。これで2階に帰れる、と私が思っていると、驚くようなことをメンバーの一人が言い出しました。

彼が言うには、まじでD棟の3階はやばいというのです。何がと聞くと、彼は説明を始めました。

私ともう一人を探している間に、3階と4階を捜索したが、3階の洗面室を覗いたときに、メンバーの一人が鏡に映る「手」を見たのだというのです。

そんなことあるはずないと思いつつも、私がそれどこの話だよ、と問うと、ついて来いと言われ、洗面室に連れていかれましたが、壁についている全身鏡にはただ私たちが映っているだけでした。

洗面室から引き返し、帰ろうとすると、彼らが今度は、「俺ら超怖い思いをしたんだからお前も奥まで行って来いよ」と言い、なぜか階段に一番近い部屋に隠れていただけの私も廊下の奥まで、その最後まで残ったもう一人の男子と行くことになりました。

さすがに二人は怖いというと、「手を見た」と主張しているのとは別の男子も一人一緒に来ることになりました。

そのD棟の3階は、割と見晴らしがよく、階段から奥に8部屋部屋が連なり、一番奥に倉庫部屋があるという構造になっていました。

だんだん奥まで部屋を歩いていくと、いつも明るい中で大勢で暮らしている2階と同じ構造で、しかし真っ暗で、静けさに支配されて、だれもいない3階の、一番奥の非常灯の赤い光が近づいてきます。

私たちの寮の脇には小規模な墓地があって、2階では見えなかったそれも3階の廊下からは良く見える位置にありました。

うちの学校は病院の跡地に建てたものなので学校と寮にはお化けが出るとかいう意味の不明なうわさも思い出して、余計に怖くなってきます。

だんだん倉庫が近づいてきて、一番奥まで来ると、当然お化けなどいるはずもないので、振り返って、待っている同級生たちのもとに帰ろうとします。

振り返ると暗くて長い廊下の先に明るい階段の踊り場が青く照らされていて、闇の中心にあいつらがたっているのを見るだけでもなんだか怖くなってきます。

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