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ヒトコワ

遠山ノブさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

人間の馴れ
短編 2022/07/26 18:53 1,539view

僕は幽霊はいないと思っているが、もし存在するとしても僕には霊感なんてものはもっていないから感じない。怖くない。それどころが、朝のニュースが終わりがけに順位付けする占いなんかも信じていない。いわゆる”霊的”なものは怖くない。もし怖いことがあるとすれば、初めての体験だろう。

僕が5月に北海道から東京に上京してきて約1か月。初めての一人暮らしではあったが、その頃にもなると、家事だったり家具だったりもひと通り揃い、かなり遠くはあるが仕事も決まり、ようやく安定してきた頃だった。

その日は6月ということもあり雨が降っていて、かなりジメジメしていた。

職場から帰るころには雨は止んでいたが、依然として空はどんよりしていて、これが梅雨か・・・と駅からアパートに徒歩で向かいながら思っていた。

家に着くと番組を予約していたため、暗い部屋でテレビだけついていた。

始まってると思いながら狭いワンルームに明かりを行き渡らせる。窓側に行き、カーテンを閉める。疲れたと思い、服を脱ぎつつ振り返った瞬間、見たことない黒い物体が壁を這っている・・・。

僕は特別虫が嫌いなわけではなかったが、見つけた瞬間鳥肌が立ち、悟った。

こいつがゴキブリだ‼と。僕は明らかに怯えながらも揃いたての家具家電、白い壁、床を這うゴキブリを追った。潰してしまうと卵を撒くらしいという話を聞いていたので、どうにかしようととりあえず掃除用の炭酸水をかけても効果はない。どうしようかと北海道の実家に電話してもなぜか繋がらない。ネットで調べるも、専用スプレーなどはなくどんどん時間は過ぎていった。家事をして明日のために早く寝たい・・・。

そんな時1つひらめいた。泡で窒息させようと。

僕はトイレにあるカビキラーを不快に動いていたゴキブリに噴射した。最初は当たらなかったが、動きを読んでかけまくっていたらついにゴキブリは動きを止めた。

泡だらけの部屋と死骸。僕はホッとつく間もなく急いで処分し、死骸すらも怖かったので小さい指定ゴミ袋に入れ、ゴミ捨て場に投げた。

次の日から僕は急いで買ったスプレーを使いたまに出てくるゴキブリと戦ってる。でもある日僕は思った。一番怖いのはゴキブリの繁殖力ではなく現れてもなんとも思わずに無心で駆除できるようになってた人間の”馴れ”だと。

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