連続写真
投稿者:キミ・ナンヤネン (86)
6年生の娘の親友Rちゃんが、夏休みに交通事故で亡くなった。
娘は2学期になっても学校に行けないほどのショックを受けたが、何とか言い聞かせ、先生の説得もあって学校に行けるようになった。
学校に行けば別の友人たちと遊んだり、クラブ活動などもあって、徐々に元の娘の姿へ戻っていった。
その頃になると秋の運動会の練習が始まるのだが、一つ問題があった。
この学校の運動会では、6年生が男女それぞれ4人ずつで走るクラス代表リレーというものがある。
亡くなったRちゃんは足が速く、この4人に入るのはほぼ決まっていたが、その代わりを誰にするのか決まっていなかった。
結局、5番目に足が速い娘がRちゃんの代わりにメンバーに選ばれた。
クラス対抗リレーは運動会のメインイベントで、それに選ばれるのはちょっとした栄誉と言っていい。
私は娘の活躍を記録に残そうと、一眼レフのカメラとレンズを夫から借りる事にした。
前にそのカメラを借りた事があって、操作方法は大体わかっていた。
運動会当日になり、低学年のかけっこでカメラの練習をしてみると、なかなかいいタイミングで撮れない事がわかった。
そこで、1秒で10コマ撮影できるという連射機能を使い、「数打ちゃ当たる」作戦を取る事にした。
娘をを撮影するには、スタート位置を正面から捉える場所がといいと聞いていた。
娘が出るリレーの前の競技が終わる頃に撮影場所を探すと、直線からカーブに差し掛かる位置を確保できた。
この場所なら他の人とお互いに邪魔をせず、カメラの手振れなどを気にしないで撮影できそうだった。
いよいよリレーが始まり、第1走者である娘を撮影するのに集中した。
パアン!
乾いたピストルの音が響き、私はズームを使ってファインダーの中の娘の大きさを調整しながらシャッターを押し続けた。
娘はうまくスタートダッシュを決め、2位にかなりの差を付けてカーブを走り抜けた。
娘が後姿になるタイミングで撮影をやめたが、娘のスタートダッシュが効いて、そのまま1位で優勝できた。
応援テントに戻り、カメラの液晶で撮影した50枚ほどの画像を見ると、どれもきれいにうまく撮れていた。
ただ、娘の体が2重に見えるような画像が何枚かあった。
ピントは娘にしっかりと合っているから、その時は光の具合か何かだろうと思っていた。
娘が家に帰ってくると、当然運動会の話になった。
「それにしても、あのスタートダッシュすごかったね。」
と娘に言うと、
「いつもはあんなに速く走れないのに、まるで誰かに引っ張ってもらったみたいだった。」
「そんな事もあるのね…。ああ、そうそう、その写真を撮ってたよ。」
「見せて見せて!」
と娘が言うので、リビングにパソコンを持ってきてSDカードを挿し、二人で見始めた。
いい話しです。