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心霊

ぴさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

隣の家族の笑い声
短編 2022/07/11 01:03 931view
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私の両親が離婚して、母と一緒にアパートで暮らし始めた頃の話です。

母はそれまで主婦だったのですが、自分一人で私を養うために仕事を始めました。

毎日残業ばかりで正直寂しかったですが、私のために働いてくれている母に我儘をいうわけにはいきませんでした。

こうして母が帰ってくるのが深夜のため、夜はほぼ私一人。

そんな私がすごく印象的だったのは、隣から聞こえる明るい笑い声だったのです。

隣には父母娘3人の家族が住んでいました。夕飯の時間になると聞こえてくる笑い声はとても楽しそうで、すごく幸せそう。

だけどその頃の私にはその幸せそうな声は毒にしかならず、より孤独感が増しました。

いつしかの隣の笑い声が聞こえる度に、「隣の家族も不幸になればいいのに」なんて思うようになりました。

現状の自分と隣の家族を比べてしまって勝手に落ち込んでいました。

そんなときに突然部屋に誰かが訪ねてきたのです。

相手は大人の人で「今日から隣に引っ越すことになりました〇〇です。」とお菓子を片手に挨拶してくれたのです。

隣と言われてきょとんとしました。だって隣にはもう既に人が住んでいるはずなのです。

私はその日の夕ご飯時にも、今まで通り隣から楽しそうな子供の笑い声を聞き、首をひねりました。

母の帰りを待って、久しぶりに話をしました。そして隣に引っ越してくると挨拶に来た人の話とその人が菓子折りをもってきたことを伝えました。

母はそれを聞いても特に驚くわけでもないようでした。だから私は不思議に思って聞いたのです。

「お隣の家族引っ越すのかな?」って。母はきょとーんとしてました。

そして私に「お隣は今まで空き家でしょ」と言ってきたのです。

私はそれを聞いて笑いました。母はいつも残業なので、お隣の人とも会ったことがないのかと思ったのです。

私が隣に3人家族が住んでいることを話したら、何を言っているのかというように怪訝な顔をされました。

そこで初めて私は隣の部屋には誰も住んでいなかった事実を知らされたのです。

私は毎日のように隣の家族の楽しそうな笑い声を聞きました。でも実際には隣はそれまで無人の空き部屋だったのです。

それを知ってから再びあの幸せそうな家族の笑い声を聞くことはなくなりました。

その後、随分前に隣のアパートで一家心中があったことを知りました。

私が聞いたあの幸せそうな笑い声はその家族のものだったのでしょうか。

幸せそうにしていたあの家族に何があったのか…それを思うと怖いというより、なんだか胸が苦しくなりました。

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