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不思議体験

いつも寂しい彼らに呼ばれていた
短編 2021/02/08 21:08 544view
私、教会の子なんです。教会の子って日本じゃ珍しいですよね。父は牧師で、私たち家族は教会の中に住んでいました。

多分、想像されたそのまんまの、木造でステンドグラスがある教会らしい教会でした。私たちが住んでいたのは、礼拝堂からドアを2つ超えた先にある普通の家でした。外に出なくてもすぐに礼拝堂に行くことができました。
夏の暑い日なんかは、ひんやりとした礼拝堂で寝転がって涼んだりもしていました。

教会には結婚式で来たことがある人もいると思います。でも、実は教会ってお葬式もするんです。お寺に比べれば数は少ないかもしれませんが、たぶん想像よりは多いんじゃないかなと思います。

物心ついた時には教会の中に住んでいたので、お葬式があることは別に珍しいことではありませんでした。もちろん怖いと思ったこともありません。

子どもだったので、お葬式があるってことは特に知らされていませんでした。葬儀屋さんが『ドライアイス』を持ってくるんです。その時は家の玄関から入ってきます。で、初めて「ああ、お葬式があるんだな」と思うくらいでした。

そう、お葬式がある時は、ご遺体が何日間か礼拝堂に置かれているのです。だから葬儀屋さんが『ドライアイス』を持ってくるのです。

子どもの頃、私はピアノを習っていました。ピアノの練習はあまり好きじゃなかったんだれど、真面目に練習をすることもありました。家にピアノがあるのですが、なぜか時折、礼拝堂にあるピアノが弾きたくなることがあります。

いえ、弾きたくなるとはまた違った感覚なんですよね。

なんとなく教会にピアノを弾きに行こうと思うんです。思考ではなく、なにか心の中からそう言われているような…。

で、ドアを2つ超えて、礼拝堂に入って…

「ああ、だからか…」と思うことがよくありました。

そう、礼拝堂にご遺体がある時だけ、無性に「教会でピアノを弾こう」と思わされるのです。

「また呼ばれた」と感じるんですよね。

不思議と怖さはないんです。「ああ、呼びましたね」と思うだけです。

広い礼拝堂にひとりで、親族もいなくて、少し寂しいなって思うんじゃないかなと子どもごころに思っていました。

だから、そのままへたくそなピアノを少し弾いたりしていました。

ときどき、棺の蓋が開いて「へたくそだな」と言われやしないかとドキドキしながら、ピアノを弾きました。

この経験は1回じゃないんです。何回もありました。
ピアノを弾きたくなるというものだけじゃなくて、気づくと礼拝堂にいたということもありました。

いずれにしても…寂しい彼らに『呼ばれていた』んだと今も思います。
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