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不思議体験

偽美さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

不思議な黒猫
短編 2022/06/29 17:55 1,349view

あれは、大学二年生の春でした。私は一人暮らしをしていました。

その日もいつものように講義を受け、バイトに行って帰ってきました。すると家の前に一匹の黒猫が座っているのです。

私は野良猫だと思って、「おいで」と手招きをしました。しかし猫は近づいてくるどころか、私に背を向けるようにして座り込み、じっとしているだけでした。

(お腹空いているのかしら……)

そう思った私はスーパーで買った牛乳を取り出して、蓋を開けると中身を飲ませようと差し出しました。でもやはり猫は近づいてこず、私の方をちらりと見たかと思うと、そのままどこかへ行ってしまいました。

「変な猫……」

少し気にはなりましたが、特に気にせず私は家の中へと入りました。

翌日、大学の構内で私は友達と一緒に歩いていました。すると向こうから、昨日のあの黒猫がやってきたのです。

「あっ!」

思わず声をあげてしまいました。その猫はこちらに向かって歩いてきたかと思うと、私達の目の前を通り過ぎていきました。そしてその後ろ姿を見ているうちに私はふと思ったんです。この子って、ひょっとして誰かを待ってるんじゃない?

「ねぇ、ちょっと待ってよ」

私は慌てて追いかけると、その子の前に立ち塞がりました。

「えっと……あなたさっきからずっとここでうろうろしてたよね?」

私が問いかけても、黒猫は黙ったままです。

「やっぱりそうなんだ!ねぇ、あなたの待ち人はどこにいるの?」

猫は黙ったまま歩き出そうとします。

「ねえってば!」

私は強引に猫を掴み、振り向かせようとしました。その時、猫の顔を見て驚きました。目が赤く光っていたのです。まるで血のように……。

「ひっ!」

怖くなった私はその場から逃げだし、家に帰りました。その夜はなかなか寝付けませんでした。

次の日の朝、私はまた同じ場所に行きました。そこにはやはりあの猫の姿がありました。どうやら朝になると現れるみたいですね。

「おはよう」

私は笑顔を浮かべながら挨拶をしてみました。しかし猫は何も言わずにそっぽを向いてしまいます。

(まあ、いいけどね……)

そう思ってその場を離れようとした時でした。突然後ろの方から声をかけられたんです。振り返るとそこにいたのはなんとあの黒猫だったんですよ。

「きゃああ!!」

驚いて悲鳴をあげると、猫はそのまま走り去ろうとしました。でもなぜか途中で足を止めて、私の方を振り返るとこう言ったんです。

『ありがとう』

それだけ言うと、そのままどこかへと消えていってしまいました。

それから一週間後、私が住んでいるアパートの近くに大きな事故が起こりました。その事故で数人の方が亡くなってしまったんです。

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