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不思議体験

HODさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

家族で体験した父の最期
短編 2022/06/30 00:58 922view

私の父は、私が高校生の頃に他界しました。

その少し前の話です。

父は余命数ヶ月と医師から宣告され、最後は母とのんびり過ごしたい、と言い退院することになりました。

うちの家族は、私と兄と両親の4人家族。

兄はすでに成人し、就職していたので、父の最後の願いに賛成しました。

私が高校生ということで母は困惑していましたが、私が兄の一人暮らしのところからでも高校に通えるから、と譲りました。

そうして、父と母は残された時間を2人で過ごすことになったのです。

緩和ケアの薬のため、父は横になる時間が多く、以前の父とは何かと変わってはいたそうですが、それでも母は身の回りのお世話に勤しんだようです。

その日は父が朝から体調が良く、珍しく食べたいもののリクエストがあったそうです。

そのため母は、少し遠くにあるスーパーまで食材を買いに自転車で出かけたようでした。

そのスーパーはまだ新婚の頃に2人でよく買い出しに行った場所だったそうでした。

途中の道すがら、母はこの公園で2人してよくお弁当を食べたなぁ、など思い出していたそうです。

その時、母の自転車の横を、向かい側から猛スピードで通りすぎる自転車が。

すれ違ったときに、おとうさん?!と驚き、もう一度見ようと振り返ると、誰もいなかったそうです。

あんなに急いでどこに、という思いと、お父さんのはずがない、家にいるんだから、でも、似ていたなぁ、と混乱したそうです。

その頃、兄は仕事で国道を車で走っていました。

信号が青に変わり、発進しようとすると、横を猛スピードで通りすぎる自転車が。あれ?!おやじ?!どこに行くんだ?!と思ったそうです。

2人の話を聞くと、どちらもお昼前でした。

家に母が帰ると、妙に静かで、嫌な予感がして父の部屋に行くと、父は布団で眠っていたそうです。

なんだ、寝ていたのね、とホッとしたのも束の間、静かすぎたのです。

何度話しかけても全く動かない父を見て、母はパニックになり、兄へ電話をし、兄もすぐに駆けつけ、救急車を呼びました。

救急隊の人が何度も、繰り返し、状況説明を母と兄に求め、蘇生活動を行ったそうですが、すでに父は亡くなっていました。

私は授業がおわり、家についてから全てを聞きました。

母や兄の横を猛スピードで通り過ぎた父の自転車と、父の推定死亡時刻が同じでした。

自転車であんなに急いで向かっていたのはどこだったのだろう、と2人は今でもよく話しています。

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