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心霊

舞姫さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

感謝…でもやっぱり怖い霊園
短編 2022/06/12 06:12 976view

20年以上前、青山霊園近くに勤務していた時の出来事です。
当時会社帰りに赤坂で受講していた私は、いつも入室がギリギリで焦って退社していました。
それを見た地元出身の同僚が、青山墓地の中道を抜けた方が近くて早いと教えてくれました。
以前、一度通ったことのある道だったため、夏の終わりで日が暮れるのが早くなってはいたものの、まだ大丈夫とその道を行くことにしました。

ところが、そういう日に限って退社しづらく、思いのほか時間が遅れ、日が暮れるのが到着予定より早まってしまいました。
まだ墓地の半ば前にもかかわらず、あたりは夕暮れで薄暗くなってしまいました。
これには非常に焦り、恐怖に走り出してしまいそうになりましたが、人気のない墓地を走る方がもっと怖いと感じ、速足で必死に歩き続けました。

こんなに長い道のりだっけ…?

いくら何でも記憶にある道のりと時間や景色の経過がどうも合わない感じで、恐怖に身が包まれる中、ふと左手人気の全くなかった墓地の中ほどに、お墓参りをしている女性の姿が見えホッとしました。
中年の小柄な女性で肩ほどの緩いパーマ、長袖又は7分袖のサマーセーター姿で、屈んで手を合わせています。
時期はずれのこのような遅い時間に変な気はしましたが、それほど違和感は感じませんでした。

さあ、早くこの霊園を通り抜けてしまおうと必死に歩くのですが、なかなか進みません。
お墓参りをしている女性との位置関係が、歩いても歩いても全く変わらないのです。

気持的に5分10分歩いているのに、女性を追い越せない、まるでその場で足踏みしているかのよう。
しかも、手を合わせている女性はずっとそのまま顔の見えない姿勢のままで、流石に時間の経過とともに、いくら広い墓地とはいえ、不自然に感じられてきました。
怖い…、でもこの女性の姿が見えたから自分は安心してこの道を歩くことができたのだし、オバケだったとしても助けてくれたんだと感謝しなければと思い、必死に歩き続けました。

ふと気がつくと、ようやく女性の同じ姿勢の姿が真横になり、そして追い越し位置まで進むことができました。

あの女性は、人間だとしても何で長時間あのように手を合わせ続けていたんだろう、安心したのと同時に疑問が湧いてきました。
ちょっと振り返ってもう一度その姿を確認したい気持ちに強くかられたのですが、後ろを振り返る自分の姿や、その時何か起きる事のほうがもっと怖い。
せっかく自分を安心させてくれた存在を勘ぐることはよそう、と思い直してそのまま出口付近にある城北高校にたどり着きました。

ここまでくれば、もう下校途中の高校生が沢山いて寂しくありません。
ところが、その日に限って一人もおらず校舎も人気が全くなく静まり返っており、白い壁がなおも続く状態、完全に表通りに出るまでさらなる長い恐怖が続きました。
もう、絶対あの道は用がない限り通らないと心に誓った出来事です。

翌日、この事を同僚に話すと、あの道は肝試しすると出るって有名なんですよね~と、ケラケラ笑っていました。
でも、高校までくれば大丈夫でしょ?という問いに昨日の様子を語ると、急に顔色が変わって、ごめんなさい、そこから長いんですよ凄い怖いかもしれないですそれ!としきりと謝ってきました。
いや、確かに本当に怖かったんですよ。

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