いない男

自分が介護施設で働いていた時の話です。

かなり前になりますが当時、勤めていた介護施設は片田舎にある緑豊かなところで、職員も入居しているお年寄りもみんなゆったりしているような環境な所でした。

働いている人は日勤と夜勤があり、夜勤者はある一定の仕事が終わりお年寄りが部屋で休むとあまり仕事が無いような勤務でした。

部屋の中の様子は当時、カメラがついていて寮母室のテレビで確認し、安否等をモニタリングするなどして特に難しい仕事ではありませんでした。その為、夜になると別の階の職員と雑談するなどしていました。

その日も別の階の職員と雑談をし、テレビを見ながらお年寄りのモニタリングを行うと居室は異常なし。

リモコンを操作していくと居室以外に廊下に２台あり、１台は談話室へ繋がる廊下ともう１台はお風呂場へ行く廊下にありました。

そこの画面を設定すると誰か歩いている人影がある。時間は夜中の２時「誰だ？こんな時間に」と思いながら雑談を中断し、テレビを切って談話室へ繋がる廊下へ行くが、誰もいない。

別の階の職員に「誰もいなかったわ」と笑いながらもう１度テレビを見て確認すると、談話室へ行くカメラには何も映っていない。

「まぁ誰か起きてきて部屋に戻ってのかも」と思うようにした。たまに良くある事だが、違和感がある。相手は年寄り、現場まで目視しに行くまで１０秒もかかっていない

そんな素早く動けるものだろうか？

他の職員も同じ気持ちだったらしく、さっきの雑談の雰囲気が無くなる。

そう思いながらテレビを見て風呂場へ行く廊下のカメラを移すと、さっきの人影が映る。

「ウワァァ」と言いながらも映った人を見続ける。そう、どう見ても生きている人では無いからだ。

しかも点滴のようなものを持っている男。カメラを見て笑っているように見える

何秒だろうか、時間にしたら２０秒も経っていないだろうが、１時間ぐらいの時間が経ったような気分だった

職員２人は硬直していたが、今は仕事中。

懐中電灯を持って確認するが、勿論、誰もいない

体験の話は以上です。

不思議なのがカメラは録画機能を搭載しているが、何故かその１時間の記録が抜けていることです。