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不思議体験

司さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

窓しか無い部屋
短編 2022/05/22 22:10 1,284view
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中学生の頃、家から自転車で30分くらいのところにある、寂れた住宅街に点在する廃墟めぐりを仲間達とよくやっていた。

その住宅街は政令指定都市に隣接するところにあったが、数十年前に10kmほど先に新興住宅街ができ(自分が育った家のあたりだ)、そちらの方が交通の便がよく、スーパーや役所の分所などもでき利便性が高い割に、地価が大きく変わらないことが理由ですっかり寂れてしまっていた。
そのためか、ほんの少し前までひとが住んでいた形跡がある家、手入れされていない雑草に囲まれた少なくとも20年は経過していそうな家、販売していた品物がまだ残っている個人商店など色々な種類の廃墟があり、怖いもの見たさもある程度満たせるので、好奇心が旺盛な中学生にとってはヒマな日曜日のちょっとした冒険ができるエリアだった。

これから話すのはそのうち一番記憶に残っている廃墟のことだ。
ごく普通の二階建ての一軒家で、外観はさほど古くなく、まだ人が住んでいてもまったくおかしくない雰囲気だった。
その家を見つけた我々は、玄関の雰囲気や割れた窓が放置されていることなどから、廃墟であろうと見立てて玄関から中に入り込んだ。
ドアを開けて板の間を過ぎると畳敷きの居間が現れたが、畳もその上に置いてあるちゃぶ台も思ったよりも新しい。週刊誌や新聞、缶コーヒーの空き缶などが散乱していたので、もしかしたら、廃墟になった後にここでしばらく寝泊まりしていたひとがいたのかもしれない。

押し入れだろうと思ったふすまを開けると、意外なことにそこに二階に向かう階段が現れた。自分にとってはかなり意外で、それ以降このような作りの家は見たことがない。
とりあえず階段を上ってみると、居間と同じような畳敷きの部屋が現れ、新聞が散乱しているなどの状況も同じような感じだった。

室外に出てみたり、また室内に入ってみたりとしばらくその廃墟の雰囲気を楽しんでいた我々だが、仲間の内ひとりが、外側から見える窓のうち室内からたどり着けない窓があることに気づいた。全員で確かめてみるが、どうやっても室内からはその窓にたどり着けない。
そのうち、一番短気なやつが、その窓を外側から割ってしまった。廃墟めぐりは好きだが、窓や室内の備品を壊すことには抵抗があった自分は結構驚いてしまったが、窓を割り、きちんとかけられていた鍵を外し、その窓を開けたときに見えたものには全員が驚きを隠せなかった。
三畳程度の部屋の壁側に仏壇が置いてあり、その部屋の中にはそれ以外のものが一切無い。居間につながるドアもなければなにも無いのだ。
つまり、仏壇だけの部屋を家の一角に作り窓だけを設置していたということだ。家の中からは行き来することができず、何らかの形で家の外から窓を外して中に入るくらいでしかその部屋に入ることはできない。

少しやんちゃとはいえフツーの中学生である我々は、その部屋を見た途端、言いようのない恐怖感に襲われてしまったため自転車に乗り一気にその家を後にした。
どんな目的でこの部屋を作ったのか、いまでも理解ができない。

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