私に呪いをかけてください

「入ったら必ず呪われる部屋って知ってる？」

友達のAがある時、急に電話してきたかと思うと、そんなことを言い出しました。

私「何それ？知らないけど…」

A「○○のマンションの401号室が、そう呼ばれてるんだって。夜中の2時以降に行くと鍵が開いていてね、玄関を上がって廊下の奥に歩いていくと、突き当りに天井から床までの大きな姿見があるの。その前で『私に呪いをかけてください』って唱えると、呪いがかかるらしいよ。ねぇ、面白そうだから行ってみない？」

私「やだよ、不法侵入じゃん。不気味だし…。Aも絶対行っちゃダメだよ」

A「え～、行かないの？つまんないなぁ…。まぁいいや、話しはそれだけ。じゃあね」

私が断ると、要件はそれだけだったようで、Aはすぐ電話を切ってしまいました。

それから2週間後、またAから電話がかかってきたのですが、様子が変なのです。

声が震えていて、息が荒く、とても心配になりました。

A「ね、ねぇ、私、行ったの」

私「どうしたの、A。なんか声が震えてよ。息も荒いし、体調悪いの？大丈夫？」

A「私ね、わ、私、あそこに行ったの、そしたらね…」

私「あそこって？A、今どこにいるの？」

A「ど、ど、どこだろう。わかんないんだけど、いつの間にかここに来ていて…。それよりもね、あの部屋に行ったの、401号室のあの部屋に。そ、そ、そしたら、本当に私、呪いにかかっちゃった…」

私「呪いなんてある訳ないじゃん…。A、ちょっと変だよ。しんどそうだし、1人？救急車呼べる？」

A「私、今どこにいるんだろう。ここ、どこなんだろう。あの部屋を出た後の記憶がないの…。いつの間にかここに居て、それで…」ブツッ

私「もしもし？A、大丈夫？もしもし！？」

Aとの電話は途中で切れてしまいました。

こちらから何度かけ直しても、「この電話はお繋ぎ出来ません」というアナウンスが流れるばかりです。

Aは、以前話していた401号室に行って、呪いがかかってしまい、何らかの事象に巻き込まれてしまったのでしょう。

Aのことが心配で、私はすぐにAと共通の友達であるBに電話をして事情を説明しました。

そして、Bと一緒にAが言っていた呪われるという401号室に行ってみることにしたのです。

夜2時過ぎ、Bと待ち合わせをして、○○マンションへ行きました。

○○マンションは私とAとBが暮らす街にある、見た目はごく普通のマンションです。

何度も前を通りかかったことがありますが、その時はとくに何も感じなかったのですが…。

Aのことがあったせいなのか、怪しい雰囲気を感じました。

Bと一緒に静かにマンションへ入り、401号室の前に辿り着きました。

Bがそっとドアノブを回すと、Aの言う通り本当に鍵が開いていて、中に入れるようになっていたのです。

Bと顔を見合わせ、最初に決めていた通り、Bが中に入って様子を見に行き、私はBに危ないことがないか扉の外で待つことになりました。

Bが部屋の中に入っていき、30分程時間が経った頃、ふらふらとした足取りのBが扉を開けて外に出てきました。