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ヒトコワ

豹変
長編 2021/02/01 01:55 9,704view
飼い主に今後をどうするか聞く。
危機は一応抜けたが、まだまだたくさんの症状があり、いまだ予断を許さない。
こうなった原因を探りながら、でもいまは排水のお陰で強度の脱水なっている現状を回復させなければならない。

「拾った命です、どうかできるだけのことをしてやってください」

飼い主は頭を下げた。
通院にした方がお金もかからない、ただどこまでよくなるかはわからないというと、集中的に治療したいという。
血糖値モニターをつけ、経時的な血糖値変化を見つつ、腎不全の治療を行い、できたらインスリンを使う方向で話がまとまった。

手をかけるぶんだけ猫は回復した。
自分で鳴けるようになり、血液検査のスコアも回復してきた。
これなら、とおもう。
これなら、いきられるかもしれない。
本当に、よかった。


そして、話はここからだ。


診察終了ぎりぎりに入ってきた飼い主は、まるで別人のようだった。
朝のお願いしますと何度も頭を下げた人とは全く違う顔つきだった。
いきなり、いけだかに治療とは全くずれたことを言い始める。

いわく、自分には持病がある、親の介護もしなければならない、いろいろ調べた、あのときは命がかかっていたから気持ちが高ぶってしまった、やってあげたいけどこの子はもう年だから、云々。

話ながら目がつり上がり、唾がマスク越しにも飛んでいるのがわかる。
どんどん内容はエスカレートし、こんな治療はのぞんでなかった、便秘と口内炎治療してくれたらよかった、食べられないのがおかしいのにそれを治療してない、生きられないっていったくせに、死んでない!
最早支離滅裂どころか、全くの言いがかりになっていた。

ついてきている旦那は居心地悪そうに何度も隣で叫ぶ妻をいさめる手を伸ばしたが、興奮状態の女は止まらない。
あまりの剣幕にスタッフたちも他の飼い主たちも奇異なものを見る目で見ている。
最後は足を踏み鳴らしたり、持っていたバッグを振り回したり、手がつけられない状態になった。

そもそも治療には同意書があり、それに乗っ取った治療しかできない。それにきっちり署名をしたのは数時間前なのだが、それも記憶から飛んでいるらしい。
特に昨今はインフォームドコンセントがしっかりなされなければならないので、同意がない治療などしない。
しかもこんな元からハイリスクな飼い主の場合、必要以上に執拗に確認を行わなければこちらも治療を怖くてできない。

しかし、刻々と激しくなる常軌を逸した振るまいに、こちらの身の危険すら感じた。
こうなるとまともに話しても意味がない。
丁重にお引き取りいたただくことにする。
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関連タグ: #猫#病院#記憶
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コメント(9)
  • ひどい飼い主だ。飼う資格なんてない。

    2021/02/01/11:03
  • すごく想像つく怖い話
    口約束ならまだしも同意書とっててこれは酷い

    2021/02/01/12:36
  • だから経済的に余裕のない奴が「かわいい」だけで動物飼っちゃいけないんだよ

    2021/02/02/13:33
  • これぞ正にヒトコワか

    2021/02/05/16:04
  • 読みやすくて上手い文章

    2021/02/09/11:30
  • タイトルも上手いな〜

    2021/02/12/22:10
  • リアルで怖いなー
    動物を飼う人にも読んで欲しいね

    2021/03/23/21:49
  • 家にいる犬を家族の一員として大切にしてきたので、こういう飼い主を見ると残念に思いますね。
    第一、そんなに酷い状態にするとは、どういう飼い方をしてきたのだろう。それを想像すると更に怖いですね。

    2021/03/30/21:15
  • 治らなくて取り乱す飼い主ならまだしも
    保険入ってなかったんかな?
    自腹なら数十万円すぐいくから、払えなかったんだろね!

    2021/05/23/02:50