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心霊

Jacobさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

風の鳴るホテル
長編 2022/04/29 22:39 2,076view

これは今から数年前のゴールデンウィーク中に起きた出来事です。

その年のゴールデンウィークは少し長めの休みがとれたので、夫とともに一週間ほどかけた旅行を計画しました。
「あそこがいい」「ここがいい」「あれが食べたい」「そこに行きたい」などとお互いにいろいろな候補を出し、最終的に決まったのが北海道一周でした。
フェリーで愛車とともに北海道へ上陸し、代わりばんこで運転をしながら、あちこちのんびりと観光や食べ歩きなどして楽しんでいました。

不思議なことが起こったのは、旅行3日目のホテルでのこと。
久しぶりの長期旅行に、私たちは少なからず旅の疲れが出始めていました。翌日のことも考え、私たちはその日の予定を少し切り上げて、早めのチェックインを済ませることにしました。
時刻は16時過ぎたくらいで、まだまだ陽の光を強く感じる頃合いだったのを覚えています。

私たちが予約したホテルは10階以上ある建物で、予約していた部屋は8階にある一室でした。
チェックインを済ませると、私たちはさっそく部屋へと向かいました。エレベーターで8階へ行き、ホテル独特のほんのり暗い廊下を少し進んだところに予約した部屋がありました。

ロックを解除して、私たちは部屋に入りました。

入ってすぐの右手にはユニットバス、進んだ先のワンルームにベッド、カウンターテーブル、テレビ、冷蔵庫などが置かれ、唯一の窓はとても大きい代物というごく一般的な部屋でした。

早々に各自荷物整理をしていたのですが、ふと夫がその手を止め窓を見ていることに私は気が付きました。
どうしたのかと夫に問うてみたのですが、帰ってくる言葉はどれも濁したようなものばかり。
やがて夫は窓を開けて、外の様子をつぶさに確認をし始めました。私はただ、そんな夫の様子を見ているだけでした。

しばらく首を動かしていた夫でしたが、そのうち納得したのか窓を閉めました。
そして一言「風が強いね」といいました。

そんな夫の様子に私もさすがに気になって、彼と交代するように窓を開けて外の様子を眺めてみました。
一面、そこには静かな街並みがあるだけでした。特に気になるような一風変わった建物も、看板だってありませんでした。
それでも他にまだ何かあるのかもしれないと、私はキョロキョロと辺りを見回しましたが、あとは泊っているホテルの張り出た非常階段がすぐ隣に見えたくらいでこれといったものはありませんでした。

私は窓を閉めて、夫に「風止んだみたい」と伝えたところ、彼は一度窓を見てから「そうだね」と短い返事を返してくれました。

それから日が暮れるまで部屋でのんびり過ごした私たちは、夕飯を食べに外に出ることにしました。
ぽつぽつとある電灯といろいろな建物の明かりだけの静かな街並みを歩いていたのですが、ふと夫が道の端っこにて足を止めました。隣を歩いていた私も足を止め、ちらりと夫を見ます。
夫は私たちが止まっているホテルを見上げていました。

どうしたのかと夫に問えば、「うーん…、うん」と歯切れの悪い返事。
夫に倣って私もホテルの外観を眺めてみましたが、やっぱり気になる点はありませんでした。
そのうち夫はスマホを取り出して、何やら調べ始めました。夫は普段から気になることがあると、即スマホを取り出して調べる癖がありました。

なんとなく夫の様子に引っかかるものはありましたが、再度聞くべきか聞かないべきか私は迷っていました。
というのも私自身、霊感というものはまったくないのですが、夫は何度かそういう体験をしている人だったからです。
最悪そういった関連だったら…。と思うと、口がなかなか動きませんでした。
結局その後、夕食を済ませてからも聞くことはありませんでした。

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